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[85341] 桜残照

詩人:千波 一也


しずくのことは

一輪、

二輪、と数えあげたく

青空ならば頷いてくれるだろうか と

躍らせた髪



真昼の月の通い路と

銀色乗せた浅瀬の流れは

中空で いま

十字を結ぶ



かたちを選ばなければ

不可視とは無縁なはざまで

祈りは

こんなに美しい




氷と雪との深い眠りを

妨げぬ色で鳥たちは啼き

氷と雪との深い眠りに

障らぬ色で獣は駈けてゆく




鮮やかな言の葉に

慎ましい光を添えながら

滅びを見据えて

あまたに 芽のほころぶ季節


ひらく、

ゆれる、

かおる、

謳歌の舞台の

そのはじまりは

いずれの花の彩りか



七色含んで割れそうなしずくは

いずれの花に

零れるか




2006/09/09 (Sat)
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