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[119997] かなしみ沿岸

詩人:千波 一也



くり返す波に

届かずじまいの手を思うとき

ようやくかぜを

聞いた気がした


この世にひとつの

具象のように



二本のあしで

すれ違えるものを

まちがえながら

ここにいる


ほら、

陸地にはもう

いさりびだけが

くすぶって



 おそらくずっと

 知らない昔に

 触れていた



手探りで

しずかにふさいだ耳のため

拾うことばに

拾われて、

みる


あおくあおく

どこまでも

何よりも


ただ、いまは、

まだ、



 かなしみ沿岸で

 さかなは必ず真新しい



毎夜、

あるいはその序章としての

語りのなかで

充ち満ちそうに

無音が跳ねる


連続せずに

こころを

踏んで

2008/01/29 (Tue)
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