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[197574] これは詩ではない、詞である。62

詩人:理恵

から風に晒されたる木の枝先は
幾度巡れば満足せん
寒かる河の畔には
褪せぬる青の蕾ありける

徒然にあなたに逢ひたる春の日は
とうの昔になりぬのに
美しからぬ我が珠の
色の一つになりにける

三日ほどの前の河の畔には
まだ咲かぬかと急かせども
今日になればわずかなる
花の変化にも驚きぬ

それも時の流れやらん
あたたけくなりぬ風のごとく
花は鮮やかになるにつれ
内のあなたもさやかになりぬ

私には冬を越える理も
持ち合わせぬと言ひたれども
幾度も回るは折節のゆえ
天つ空にも移りゆく

睦まじく寄るも花弁のごとし
儚く別るるも花弁のごとし

あはれなるあなたの心の内にこそ
穏やかなる春の風吹けば
いかに嬉しからんと思う夜ぞ
我が振袖が濡れるとも

花が咲くたび思い耽け
花が散るまで思い耽く

そうして珠の色づくからは
幾度もあなたに思い帰らん






2022.3.29.

2022/03/29 (Tue)
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