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[151373] 祭りの後

詩人:トケルネコ


サダムフセインが何をやったか知らないが
縊り殺すことはあるまいと姉は泣いた


その白い腕にはいつしか無数の蛇が蠢き
薄い胸の裏には小さな蝶が羽を広げていた
ボロボロの人形を抱えては窓辺の椅子がお気に入りで
彼女はいつもそこでTVに卵を産みつけていた


黒か白か見分けのつかない
多分まだらな卵を


誰かが死ぬと嬉しそうに首を傾げ
山河が崩れ氾濫すれば頬を膨らませ
彼女は真剣に喘いでいた
秘密を知ったアリスのように
無邪気をみな代償にするのょ
だれもフトしたことで消えるのょと
笑いながら


それはおかしなふりをした道化で
天性の毒婦の声で騙る女優で
誰からも疎まれる役回りを愛おしむように
聞きたいことを聴き
喋りたい夢だけ描き
見失ったページばかり繰っていた
無表情とは無縁な手つきで
爪ばかり輝かせ


あの人たちはどこへ行くのと月に問い

祭りの帰りねと自ら答え

あたしも行きたかったのにと勝手に惑い

どうでもいいわと一人頷く



母が新調した浴衣には触ることもなく……


あの冬、砂漠の独裁者は砂に埋もれ
姉はアラビアの窓から覗く祭を観ていた
赤や黄色や土と硝煙の 多分偽物の花火を
どうでもいい、どうでもいいわと
細い脚を撫でながら
首を傾げ


ただ人形のような乾いた唇で


人形のように冷めてしまうまで



2009/12/18 (Fri)
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