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[191414] 父の拳

詩人:どるとる


同じ屋根の下で 同じ釜の飯を食べて

同じ時間を過ごし同じようなことで悩んで迷って

でもすれ違うよ もしかしたら他人よりも
憎んでしまうかもしれない
裏切ってしまうかもしれない

でも 肝心なときはいつでも
ひとつになって どうしたら
うまくいくのか 真剣に考える

手をつないだら離さないよ
生まれたときから僕らは
どうしようもなく家族だ

泣いて笑ってたまには怒って
喧嘩してもまた何度でも
仲直りして明日にはけろっとしてる

巡りあったことは偶然なのかな
それとも運命なのだろうか
そんなことを考えながら
血でひとくくりにつながった輪の中にいるよ

夕暮れに沈んだ 街は項垂れて
元気なく 影を落としている

素直になれず傷つけた 昨日を反芻する

言い過ぎたかなあなんてあとで思い病むのが
いつも 変えようと思っても変わらないことだ

一緒に洗濯しないでという娘
会話もない息子 愛想のない妻
理想と現実の差

小さかった頃はあんなに
かわいかったはずの子供たちが
いつの間にか大人になって
生意気な口を利くたびに

すぐに手を出すようになって
叩いた 拳を見つめながら
泣きながら どうしてこうなってしまったのか

殴られたほうももちろん痛い
でも殴ったほうも痛いんだぞって
お決まりの台詞言いながら 素っ気なくごめんって 言ったよ

言葉を探していた 頭の中に 散らかったたくさんのそれらしい台詞を

これでもないあれでもないって 模索しながら 諦めそうになりながらも

父である自分を 思い出して 伝わらずとも 言葉を 語り聞かせてく心を込めて

その拳には 厳しさと優しさが 握られている。

2016/04/16 (Sat)
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