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[191726] 補助輪を外す日

詩人:どるとる


父の背中が 大きく見えた日は
今までのことなんか忘れちゃったよ

喧嘩したこともあったよね
何度もすれ違ってひどい言葉も浴びせ浴びせられた

だけど 僕が悲しいときにはきまって
何も言わずに そばにいてくれたよね
黙って僕の話を聞いてくれたよね夜が明けるまで

その背中に僕は守られていた
ただ 背負われていただけだと
気づいた僕は もう一人で歩ける大人だった

自転車の補助輪外すように
もう支えられなくても 風をきって
何処までも 思うように走って行ける

だからあなたに手を振る見送られて
今度は僕の背中を あなたに見せる番だ
こんなに 大きくなったんだよって
いつか 言えたならいいなあ

母のまなざしが 懐かしく思えた日に
小さな頃の思い出がふいによみがえる

小さな僕は好き嫌いが 人より多くて
にんじん たまねぎ ピーマン お弁当のほとんどを残した

だけど翌日も よく翌日もあなたは
気にもせず お弁当を作ってくれたんだ
相変わらず残してたけど ありがとう言えなくて

素直になれなかっただけだよ
なんだか恥ずかしくってさ
お弁当を食べきった日のあなたの笑顔は今も忘れません

なんだって 一人で出来るようになったよ
苦手なものは苦手なままだけど
人間らしくっていいじゃない

あなたは 失敗する僕にそう言うの
そうか僕はそんな人たちの愛に育てられたんだなあ
その時やっと気づくの あなたたちの子供に生まれた幸せに

ありがとうも ぎこちないや
愛してるなんてもっと出ない言葉
おならやあくびみたいに簡単に 吐き出せたらいいのにな

自転車の補助輪外すように
もう支えられなくても 風をきって
何処までも 思うように走って行ける

だからあなたに手を振る見送られて
今度は僕の背中を あなたに見せる番だ
こんなに 大きくなったんだよって
いつか 言えたならいいなあ。

2016/05/20 (Fri)
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