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[56206] J.Dとカフェ

詩人:タンバリン



 それぞれの座席の下には毛の長い小動物が、顔を隠しながら走り回っていた。
皆煙草をふかしていたが、むしろこの店が建つ前から、嫌々生まれるべくして生まれた様な、紫の粉塵、それに構成された煙が目障りだった。

 小気味良くベルが鳴り、ミンクを纏った女が入って来た。最初のコーヒーを飲み終えたかどうかの時間だった。
レモンパイが届くと、彼女は上品に、いとも簡単に紅茶の入ったカップを叩き割った。

 店中の、黒いスーツで出来た男達は、一人残らず襟を正して、羨みの目でそれを眺めた。

 紫の粉塵は、誰にも気にされずに、しかし大胆に引火すると、雰囲気も人間も一緒くた爆破した。

 そしてまた、入口のドアやカウンターの後ろから、気分の悪い擬音をたてそうな速度で、そっと、店中に渡って浸食を始めた。

2005/11/17 (Thu)
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