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[175177] サンセット通り

詩人:さみだれ

サンセット通りには泳ぎ疲れた人魚たちが亡霊のようにさ迷っている
かと思えば生まれたばかりの珊瑚の子供が母との別れを惜しんでいる
サンセット通りを北に行くと小さな喫茶店がある
癖毛のマスターが淹れる紅茶には肩をほぐされると
彼女はよく言っていた
その向かいにあるホテルに若いロブスターが恋人らしき女性と入っていく
そこに愛はあるのだろうかとマスターに訊ねると
マスターは怪しく犬歯を光らせ(営業用のスマイルか)コップを磨く作業に戻った


そうだ
サンセット通りには決まって午後五時になるとチャイムが鳴る
何十年か昔の童謡らしい
彼女はそのチャイムが鳴る間だけ内緒話をした
ほとんど聞き取れないままチャイムが止み、その後彼女は"帰ろう"と言う
それが日常だった

サンセット通りには遊び疲れた人魚たちが亡霊のようにさ迷っている
そこに彼女の姿はなく──
いつまでも来ない夜を思って
僕はその場を去った


2012/03/23 (Fri)
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