詩人:雪 刀寿
春にあこがれた人々は、勢い余って 夏を病的にこじらせた
ちゃんと の つもりで 抱きしめてたのに
離れてしまったあなたの心
残され、穴のあいた この胸は、
夜露で しとしと 濡れそぼる
社会で 大人の誰かが 言った
「きれいな 花たちは 腐った泥土のしたのほうから にょきにょき出て ございまするのだよ」 あぁ
響く静寂
うっすら ちっぽけな歓喜
透明に、すき通った時間のなかで、
遥かに遠く このあたりの空気を包む、新しい期待感
ぞくぞく
思う春
考える夏
夜も、熱波で駆け巡り、
悲しい楽しみ が、
にぶく 電撃に 性器と肛門のあいだを 走り抜く
夏に出す熱
地球の風邪と知恵熱