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[61596] 終幕のイントレランス

詩人:高級スプーン

夕陽と共に
暗闇に飲まれた街並も
朝には
何も無かったかのように
復元されている
昨日と違うのは
その小さくて
白い二の腕に
押しつけられた憎しみの
傷痕の数ぐらいで

倒れられない
立ち続けなければ
どんなに厳しく
責められても
笑顔を
絶やしてはいけない
愛されなくても
忘れられないように

着せられた罪の下
痣が増えていく
母の悲哀を
受け止め続ける事が
僕の役目
代わりにはなれない
存在に対して
唯一許された
生き方だったから

胸の中で必死に
抱えていた赤子は
最初から
息をしていなかったと
指摘をすれば
終わっていた話なのに
待ち受ける辛苦を
手放せずに
手に入れられない対象に
満たされたいと
それぞれが縋り続けた

選べなかった死に方を
常夜の恐れに襲われて
甘い酸い夢の中
僕を咎ごと
抱きしめて欲しいと
愛を乞う者に
与えられなかった幸せを
誰一人
許されなかった痛みを
自らの指を
くわえて眠る僕を
受け容れて欲しいと
ずっと見ていた
貴女の姿は失われ

床に転がる女から
母の匂いが還るまで
僕は種から孵らなかった

2005/12/31 (Sat)
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