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[95206] エナメルの靴

詩人:亜子


ちいさな靴をみつけた

一息で年月を吹きとばすと
花のかざりをつけた
エナメルの靴だった

少しこすると
ぴかぴかと大好きな艶を
思いだして
むかし私に似合っていたことをほんのりと教えた

エナメルの靴はそれから
もう履かれないさみしさにひとなでされてから
また箱にしまわれた

けれど人との記憶は
履きつぶせないから

会いたい
会いたいと
そればかり

私に忘れられないあなたと
穏やかな忘却の箱にしまわれたエナメルの靴

どちらが豊かな旅路だろう

そこはかとなく
なにかがとけていくような
記憶の旅情がすぎるとき
私はかろうじて
片道切符で
ふみとどまる




2007/02/01 (Thu)
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