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[122313] honesty village

詩人:高級スプーン似

嘘つきは嫌いだ


Y字路の手前で迷う
あなたは
どちらの道から
来ましたか?
分岐点で立っていた人に
案内してもらい
私はその村に辿り着いた

人間関係に悩まされ
疲れ極まって
久々に泣いた
少しすっきりした頭で
「会社を辞めよう」
そう決断した

駅から離れていてもいい
田舎でもいい
条件は一つ
それなら
ここがいいですよ
差された指の先
その場で決めた

浮気している
彼女に別れを告げ
列車を乗り継ぎ
二時間半
清々しいぐらい
何もない
縛られるものも
何もない
思うと自然に
口元がほころんだ

にやにやするな
気持ち悪い
すれ違いざま
女が言った
なんだいきなり
思った瞬間
急に立ち止まるなボケと
オヤジが私を
押し退けた
なんなんだ?

そういう事かと
またニヤついた
何あいつキモい
変人だ
言われて私は
笑っていた
声に出して
笑っていた

村人は
思った事を
口にしただけ
それが嬉しくて
私は笑っていた


それから一年


君には
期待してないから
上司にそう言われ
カッとなって殴った
頭の中で
だけだけど
お前と特に
話す事ないんだけど
友人にそう言われ
愛想笑いで誤魔化した

彼女に
寂しい寂しいと
つきまとわれて
うるさいなと
振り払った
浮気してやると
彼女は泣いた

本気で言ったんだコイツ
反省よりも先に
怒りが込み上げてきた

そんな気持ちを隠して
私は
愛していると
彼女を抱いた
嬉しいと
彼女は言った
虚しくなった

こんなハズじゃなかった
最悪な村だ
物取りに
物を盗りますと言われ
包丁で刺された

最悪なのは
俺の方か
どんな時だって
どんな土地だって
住めば都
そうは思えなかった

自分が変わらなきゃ
何を変えても
結果は同じ

そういえば
あれから一度も
見かけなかったな
人の少ない
小さな村なのに
通りがかったあの時
分岐点に立っていた
あの人を

意識が朦朧とする最中
耳にした言葉


嘘つきは嫌いだ

2008/03/06 (Thu)
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