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[75949] ウィンクするドラゴン

詩人:ワーズワーク

6500万年前の六月の昼下がり
たしかに空にはやつがいた
遥かな高みから地上を見下ろし
大空の支配者に君臨していた
あの巨大隕石が襲いかかるまでは…

空に向かって飛び立とうとする意志を
やつはいつ持ったのか?
なぜ 空をめざそうとしたのか?

蝶の優美さにあこがれをもったためか?
タガメのように歩くことも泳ぐこともできる生き物が
空まで飛ぶことに嫉妬したからなのか?
もしかして翼竜は
昆虫コンプレックスのかたまりだったのか?
それともたんに
トビウオが空を飛んでいるように錯覚したからなのか?

この地上に抑留されしすべての生き物たちに
衝撃と羨望を与えし翼竜の出現
昆虫以外で初めて大空に羽ばたいたウィング・ドラゴン
それは鳥たちが生まれ出でる遥か昔の遠い出来事…

梅雨の晴れ間の六月のとある日
羽根を休めた鳥たちの
ため息が聞こえそうな白昼夢

翼竜は時空を超えて
突然目の前の上空に現れ
微かなウィンクさえしてみせたのだった
空で待ってるよと…


この背中に翼ありせば
倦むことなく朝焼け夕焼けの空を飛びまわりしものを…

翼ある者すなわち
大空に永遠の自由を描けし者なり
翼を獲得するために進化せし者は
何を捨てさり何を得たもうか

夢想の果てに浮かんだまぼろしは鳥人の姿…

6500万年後の六月の昼下がり
たしかに空にはやつがいる
翼竜ならぬ翼人が
「やったね」と微かなウィンクをしてみせた

2006/05/25 (Thu)
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