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[11430] 僕の連休〜リオとかあさん〜

詩人:望月 ゆき

連休もこれからという
その日

僕んちの犬のリオが死んだ

かあさんからの電話でそれを聞いて
びっくりしたけど
それよりも かあさんが
あまりにも 毅然とした声だったので
そっちの方が 僕には驚きだった

かあさんは 言った
「もう 十分すぎるくらいに
   可愛がったから 何も悔いはないわ」
その言葉で
僕は思わず涙が出たけど
泣いてることはわからないようにした

次の日 
火葬場で焼かれたリオは
あまりに細い骨たちの集まりで
僕はまた悲しくなったけど
泣くことだけはしなかった

かあさんは一度も
僕たちに涙を見せなかった

かあさんが涙を見せないのに
僕が先に泣くことが
とてつもなく 
罪なことのように思えたんだ
だから 我慢した

家に戻ったら
リオの使っていた物は
すっかり片付けられていて
明日出すゴミ袋の中に
押し込められていた

でも 僕は
それを冷たいとかって思うやつは
絶対ばかだ、と思った。

それくらいに かあさんの
愛は大きかったことを知ってるから

リオはもう いない

お風呂の中で
歯をみがいていたら
急にいろんなことが悲しくなって
僕はとうとう涙を流した

多分それは
涙ではなくて 湯気だったのだ
と いうことにしたい
すくなくとも かあさんの前では

お風呂から出ると
かあさんが背中を丸めて座っていて
かあさんは ぽつりとつぶやいた
「もう 犬は飼わないわ」と。

これが
今年の連休の
僕の 一大イベントだった

2004/05/03 (Mon)
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