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[14279] シリンジ

詩人:望月 ゆき

ここのところの暑さは
かなわんね、と
足元で声。

室外機のうしろ
干からび寸前の
トカゲが
ペラリペラリとにじる

爬虫類系、得意じゃないけど
手のひらにのせてやった。

こう毎日毎日暑くっちゃ
たまんねぇな、
で、いい場所を見つけたと思ったら
3日ほど前だったか、
突然そいつがブーンて音をたてて
震えだしたんだよ。
そのうちだんだん熱くなってきて、
おいらも逃げりゃあいいのに、
何か期待しちゃったんだなぁ。
そのままはりついてたらこの様よ。
トカゲは聞いてもいないのに
一気にしゃべり終えた。
声もカスカス。

とりあえず
今年一番の暑さでした、と
夕方のニュースが発表してた3日ほど前
のぼくが
今シーズン初めてエアコンを作動させたことは
だまっておいた方がよさそうだ。

罪悪感と嫌悪感ともうひとつの
よくわからない愛情にも似た気持ちから
トカゲに秘密の液体を注入してやった。
こいつは花壇のケイトウにもよく効く。

みるみるうちにペラペラはプルプルに!

ま、これで
その辺の大人(特に女の人はね)がうわっ、なんて
ビックリするにせトカゲのオモチャくらいには
なったんじゃないの。

それを聞くとトカゲは
目をギラギラ、いや、キラキラさせて
隣の井上さんちへと這いずりだした。
腹が、歩くたびにプルプルとふるえて
足跡ならぬ腹跡を残して
中に消えた。

ああ、
秘密の液体入れすぎたかもしれない。


2004/06/27 (Sun)
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