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蒼月瑛の部屋  〜 新着順表示 〜


[15] わらいそめ 第2部
詩人:蒼月瑛 [投票][編集]

体内の臓物から何かが込み上げてくる。

この感覚。何で気付かなかった。この視線に。

あいつは悲しそうにうつ向きながら、泣いている。

ごめんなさいと呟きながら。

く…来るな。来るな。
気付いた時には、一心不乱に逃げていた。逃げた。逃げた。逃げた。

「ごめんなさい。ごめんなさい。」

背後から聞こえてくる囁き声。

全身が寒い。冷たい汗が滲み出る。

影が俺を追いかける。

前がよく見えない。何でだよ。目を力一杯に拭う。

その時
光りが閉ざされた。

逃げ場なんてないんだ。

怯える俺に、立ち塞がったあいつは嬉しそうに笑って見せた。

初めて見る嬉しそうな笑顔に

恐怖は高まる

震える俺は情けなく立ち上がれない

そうまるで生まれたての子馬のように

そしてこいつはまるで、子馬を襲わず立ち上がれず苦しむ姿を楽しむ死神のように

もう駄目かも知れない

さあ早く殺してくれ

そう覚悟を決めて目を瞑った。
その時にはもう身体の震えは消えていた。

包む静寂と多重する時間

どのくらい経っただろう

積み上げられた時間の重みに耐えかね俺はそっと片目を少し開けてみた

影の先のあいつは

悲しそうにうつ向きながら、泣いていた

2010/03/23 (Tue)

[14] わらいそめ 第1部
詩人:蒼月瑛 [投票][編集]

「ごめんなさい」
もうこの言葉だけは聞きたくない

確かに最初はムカついて

あいつは何やっても駄目だから

つい「頼んだ俺が悪かった」そうキツイ言葉を突き付けた

自分でも、言い過ぎたって思ったさ

だから「あのことは許すから、もう気にすんな」ちゃんと出来るだけ優しく言った。

あいつの澱んだ目を見ながら。結局あいつは、悲しそうにうつ向きながら笑っていた。

それから、しばらく何事もなく生活していた。

でもある日、俺は気づいた

誰かが見ている

俺のことを遠くからじっと息を殺しながら、ずっと。のしのしと。

そこにいたのは、光を失って死んだようなあいつの目だった

あいつはいつも悲しそうな顔をしている。

そういえば、あいつの嬉しそうな顔を見たことがない。

いつも悲しい笑顔を作る。 笑い方を知らないのかも知れない。

それから毎日視線を感じる。

あいつはただ俺に視線を送っているだけなのに俺はどうしてこんなに怯えているのだ。

あいつには威圧感の片鱗すらないだろう。

なのに何でこんなに震えるんだ。

その時に
「ごめんなさい」

はっきり聞こえた。

まわりには誰もいないはず。

「ごめんなさい」

もう一度さっきよりはっきりと聞こえた。

2010/03/23 (Tue)

[13] 子馬さん
詩人:蒼月瑛 [投票][編集]

「ごめんなさい」

僕は君に謝りたい

あんなことしてごめんなさい。

全部僕が悪いのに

君は「俺も悪かった」と言って励ますの

その励ます言葉が、僕の心を揺るがしていることに君は気づいているのでしょうか?

僕は君に謝りたい。

どうやったら許してもらえるの?

君はそっけない顔して「許したさ。」って言うんだよ

それは嘘。僕には分かる。

だって君の目がそう言っている。

僕は君に謝りたい

何て謝ればいいんだろう?

ごめんなさい。ごめんなさい。

君は、何度か汚い目で僕を見た。

僕には分かるよ。
よく君の目の色を見てるから。

何でそんな事するのかな?

何度も冀うのに?

君は「来るな」って言うんだよ

僕が近づきたくたって、君から逃げるから。

安心して。僕は追いかけたりしないから。

ごめんなさい。

そう言いたいだけなんだ。

僕は君に謝りたい。

僕は君に謝りたい。

僕は君に謝りたい

僕は君に謝りたい。

僕は君に…

よかった…
やっと会えた…ね?

逃げ場なんてないんだよ??

君は子馬さんだね。

2010/03/26 (Fri)

[12] ごめんなさいと呟くの
詩人:蒼月瑛 [投票][編集]

悲しき慕情が降っている
嬉しき人情が落ちている

私はそれを拾いあげ、
知らん顔して、食べちゃうの。


味なんかないけれど、私はまた拾いあげ食べちゃうの。

そんな自分に
気づいてしまうのはずっと後

それでもなお、私は駄々捏ねるの


ごめんなさい

悲しき慕情はどこへ行く
嬉しき人情はどこかへ行った

悲しき慕情はまた泣いて、嬉しき人情消えちゃうの。


もう食べちゃわないよ。

そう呼び返すのだけど

悲しき慕情は止んでしまった。
嬉しき人情は帰って来ない。

ああごめんなさいと呟くの。

2010/03/21 (Sun)

[11] 記憶の削除
詩人:蒼月瑛 [投票][編集]

僕の記憶がなくなる5秒前
逃げ場なんてあるわけない
迫り来る魔の手に
僕は今何を思うの?

僕の記憶がなくなる4秒前
そこは静寂の中に降り頻る驟雨と空に放たれた閃光の後から飛来する轟音が足された世界
これまで生きてきて僕はよかったよ
たくさんの友に囲まれて、たった一人の女性とも出会うこともできた
俗にいう素晴らしい人生だったよ
後悔なんてない。といったら嘘だけど
でも、それなりに満足している
それが幸せの代償ならそれでもいい。

僕の記憶がなくなる3秒前
それでも彼女に言えてなかったな
「ありがとう」って
でも、僕は死ぬんじゃない。
ただ記憶がなくなるだけ。
その僕と彼女はきっと楽しい生活を営むんだろうなあ
そこに僕が立ち会えないのは残念だけど
・・・アレ?

僕の記憶がなくなる2秒前
僕は記憶がなくなるだけ?
いや、違うだろ。
僕は僕でなくなる
僕は、あの素晴らしい時間を失う
ということは、僕じゃない誰かが
僕の知らない誰かが
何喰わぬ顔で、僕として生きるということ
じゃあ僕は、どこに行く。
なくなるのは記憶だけ
それは蜩の脱け殻か。
僕は死ぬ

僕の記憶がなくなる1秒前
それは僕であって僕ではない。
僕?ぼく?ボク?
じゃあ何が残っていれば、僕なんだ
どれが僕であって、どれが僕ではないんだ?

じゃあ結局僕って誰な…




ボクハダレ?
遅れてやってきた轟音が特別大きく鳴り響いた

2010/03/20 (Sat)

[10] 虚夢
詩人:蒼月瑛 [投票][編集]

ふと思った
恥をかいてみたい

恥ずかしながら私はろくに恥をかかずに生きてきた

ちょっとした天使のお告げか、はたまた悪魔の囁きか。

でもそうするには、私の中や周りに邪魔者が多すぎる

それは今も昔も変わらないだろ

恥ずかしいことを恥ずかしがらずにやっている人を見ると

私は多分みんなと一緒に馬鹿だな と嘲笑うだろうな

そういうことを知ってしまってから

そういう目を知ってしまってから

私を良くも悪くも育てたのは、そういう目なのだろう

けれど、 新しい世界を知ってみたい

縛られた人生とはおさばらしたい

なんて考える度にいつも 私も子供だな と頭をかく

そういう馬鹿が許される年齢ではない

だからこそ、この感情に終焉はない

終わらない夢を叶えてみたい

それはある意味真っ直ぐに生きてきた私のちょっとした退屈しのぎ とでも言っておこうか

そうすりゃ問題ないだろう

たくさんの嘘を散りばめて生きてきた

嘘が私を育ててくれたといったら過言だと思ったが、案外当たってたりするのかも知れない

でも、嘘をつくと何かが堕ちる音を聴いていた

それと相反して、背徳感は私に覆い被さった


だからだろう
神様は私の散りばめられた嘘をかき集め、不細工に貼り付けて創った
夢という嘘を見させたのだ

思い切り馬鹿やっても許される嘘の世界

少しばかり大暴れする
背中を覆う背徳感情はすっかり風が拐って行った

そして、みんなと一緒に嘲笑おう

馬鹿だなと

2010/03/15 (Mon)

[9] 逃げ場なんてないんだよ
詩人:蒼月瑛 [投票][編集]

死ぬなんて言うな

― 死んだって何の解決になるんだ?

― 人様に迷惑かけて
お前は何様だ?

― 死ぬ勇気があるんならなんでも出来るよ

― 死にたきゃ死ね
どうせ死なないくせに

みんなそう言うけれど

死んでも逃げ場なんてないんだよ

そんな気がする

2010/03/13 (Sat)

[8] 裏かえし
詩人:蒼月瑛 [投票][編集]

悲しみを裏かえし
苦しみを裏かえし
憎しみを裏かえし
怒りを裏かえし
さよならを裏かえし
ごめんなさいを裏かえし
口喧嘩を裏かえし
戦争を裏かえし

そうして
世界は裏かえった

2010/03/13 (Sat)

[6] 飴玉の味
詩人:蒼月瑛 [投票][編集]

見えてるけど、遠くにあるもの

見えてるけど、その甘さに頬を赤らめることはできないもの

私にとっての飴玉はまだ未開拓の大草原

それは一種の世迷い言
だけど、私にとっては切なる願い事

一度も口にしたことがない
その飴玉をひょいと誰かが放り投げ、弧を描いて、うまいこと私の口へと運んでくれないだろうか。

それとも、誰かが四方に配る飴玉を知らん顔して口へと運んでみてはどうだろう。

しばらくすると
飴玉は届いた。いや、私が勝ち取ったのだ。
案外それは簡単に手に入った。

けれど口にしたそれは私が想像していた味ではなかった。

甘くするための砂糖や添加物、その他諸々が何重にもコーティングされ、混沌たる形状化された味

耐え切れず吐き出した

飴玉は抗うことも許されず、無抵抗に地へと堕ちた

土がべっとりとこべりつき、唾液が溶かした混沌たる何かで濁った飴玉は静かに行儀よく座ってる

その時、にゅうっと隅のほうから伸びてきた手

それは今まで飴玉を食べられなかった子のものだった。

その子の手が、私の口から吐き出された飴玉を
手に取ると、そのまま自身の口へ放り込んだ

呆然、唖然、驚愕そして軽蔑した

あんなに不味いものをしかも私が食べ吐き出し土までついてしまったものを

あの子は
平然と口にした

理解不能

顔色一つ変えず、口を規則的に動かし続けている

時折砂利の砕ける音が聞こえてくる

それでも、淡々とその子は口を動かす

その子を見ているとふと気付いた

その子だけじゃない

私の周りにいる子はみんな何かを舐めている

それは飴玉だとすぐに理解した

と同時に、私がこれからどうなるかも理解できた

隅から伸びてきた手に抗うことは許されない

2010/03/12 (Fri)

[5] 
詩人:蒼月瑛 [投票][編集]

つまらない夢を見た。

私はぽつりと立っており、分厚い小窓から見える外界をただ呆然と見ていた。

外界にいたのは私だった。これまた私と同じようにただ呆然とどこか一点を凝視して立っている。

それがどこなのか、この小窓からは確認できない

この時、私はこれは夢だと気づいた。

と同時に、外界に異変が起きた。

もう一人の私が突如うずくまり、もがき苦しみだすのだ。

けれども、私はいやに冷静でそれを凝視するだけ。

もう一人の私は断末魔のような叫びを一つまた一つとあげている。

ふと私は誰かの視線を感じた。

針のように鋭い視線。

私はそれに突き刺されたように強直してしまった。

目を見開いているのがやっとであった。

額には、夢だから許されるくらいのとてつもなく冷たい汗が滲み出ている

たが、私はそれを拭えない

恐怖と不安と痛みで私の心が震えだしていた

そこで私は目を覚ましたのだ。

覚めてもなお、刺さった針は抜けはしない。

2010/03/13 (Sat)
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