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アルの部屋  〜 新着順表示 〜


[116] 柚木 凛・物語3
詩人:アル [投票][編集]

《0点》


お!ユキちゃん
どこ行くの?

総務です
今日は名前
間違えないんですね

お昼、あの店行く?
サキちゃん

ユキです!
行きません
お弁当ですから

お!意外に家庭的

「意外」は余計です
だいたい主任は
いつも一言多いんです
付いて来ないで下さい

相当嫌われてるな、俺
ユキちゃんに

その「ちゃん」付け
も止めて下さい

俺のどこが嫌い?

こんな所で
止めて下さい

言ってくれたら
引き下がる
どこが嫌い?

強引で
無神経なトコ、
自信過剰で
空気読めない、
声がデカ過ぎ、
融通効かない、
真面目な話が出来ない…


で、好きなとこは?

……

ないのか?
一個も?
でも、まぁ、いいや。
0点なら、あとは
点数あげてけば
いいだけだから

そんなトコも嫌い
否定されたら
ちゃんと
落ち込んで下さい
主任を
否定すればする程
自分が小さく見えて
哀しくなります

2010/06/06 (Sun)

[115] 柚木 凛・物語2
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《KY》

なんだ
来てたのか
サキちゃん

ユキです
いい加減
名前間違えないで
下さい
てか、ワザとですよね?

そこ座っていい?
マキちゃん

ダメです!

なんで?

最近、社内で
噂になってるみたいです
わたしたち...
マズイですよね?

そのカルボナーラ?

人が真面目に
話してる時くらい
真剣になれないんですか
主任は!

ボクト真剣勝負シナイ?

は?

えっと...
「木刀真剣勝負竹刀」
剣道つながり...
なんちて(笑)

.........


オイ!待てよ
ユキちゃん!

2010/06/06 (Sun)

[114] 柚木 凛・物語1
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《強ing・プロローグ》


ねぇ、サキちゃん
ケッコンしない?

サキって誰ですか?
わたしユキですけど?

ねぇ、ダメ?
ユキちゃん?

ダメです!
だって主任
奥さん
いるじゃないですか!

いたらダメなの?
なんで?

何でって、
ダメに
決まってるでしょ!
なに言ってんですか!

じゃ何、エリちゃんは
いちいち
相手が既婚者か独身か
確認してから
好きになるわけ?

ユキです!
サキとかエリとか
ワザと間違えてませんか?

名前なんて
タダの記号だよ。
きみは名前で
人を好きになるのか、
エリりん?

エリりんって(笑)
ユキですから!
もう、
いい加減にして下さい。

何度くらい?
ぬる目が好きなの?

湯加減聞いてる場合
じゃないです。

俺シャワーなんだよね
冬でも。

いや、だから、
お風呂の話じゃなくて。

何の話だっけ?

結婚です。

え!してくれんの?

だから、しませんてば!

なんで?
俺が嫌いだから?

別に
嫌いじゃないですけど…

なら、いいじゃん。

よくないです。
主任、
奥さん
いるじゃないですか。

きみ、
俺の奥さん
見た事あるの?

ないです。

きみは自分で
見てもいないモノを
信じるのか?
俺はユーレイも
ユーフォーも信じない。

なんの話してんですか!

何の話だっけ?

……。

いつがいい?

は?

だから、
俺たち
いつ式挙げようか
ユリちゃん?

もういいです…

わかった、
ごめん、悪かった
結婚は諦める。
その代わり、
俺と個人的に
付き合ってくれる?

それ普通に世間では
不倫って言うんです。

それじゃ、
普通じゃないヤツで…

普通も特別も
いりませんから!

ホント我儘だな。

どっちがですか!
あの…主任?
そろそろ
お昼休み終りです。
もう行かないと。

何処に?
やっぱ結婚?
教会?

会社です!





2007.Dec.

2011/06/12 (Sun)

[111] ご戯れの神々
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自分に似せて
作ったから
きっと
人間はこんなに
自己中になったんだろう

自分を信じない奴は
救わないなんて
我儘も甚だしい

求めよ
さらば開かれん

当たり前です
自分が動かずに
開くのは自動ドア
くらいのものだから

八百万や
ギリシャの神々も
嫉妬や怒りの権化で
不完全な人間そのもの

群盲が撫でて
それぞれの象を語る

僕の象は僕に似ている

2010/05/29 (Sat)

[110] ひやみかちうきり
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誰もが
主役になりたがる
複雑で大味なドラマ
刺激ばかり望むから
塩っぱいだけの
飲めないスープ

誰しも
悲劇に浸りたがる
ひとりよがりのドグマ
自分ばかり見てるから
抜け出せないで
繰り返すループ

誰かが
いつか救ってくれる
業を煮やす火のカルマ
眠れぬ夜に
数えるシープ

子供は
大人になりたがらず
大人は
子供にかえりたがる

みんなみんな我儘気儘
みんなみんな得手勝手

きっと
神さまだって休みたい
ずっと
神さまだって眠りたい
もっと
神さまだって癒されたい
そっと
神さまだって救われたい

2010/05/27 (Thu)

[109] ランナー
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ひたすら
走り続けてれば
いつか辿り着ける
何処かで
借りてきた言葉
焚き付けて
燃え尽きる
夕焼けの空

昨日によく似た一日が
今日もまた暮れてゆく

何も握ってない
この手だから
何だって掴める
何回も
つぶやいた台詞
使い古して
擦り切れる
心は上の空

ぼくに似ていない背中
明日もまた追いかける

抜きつ抜かれつ
駆け引きの明け暮れ
ゴールの向こう
地面に書いた答えが
雨に消えないうちに

一周遅れの
トップランナー
喘ぎながら微笑んで
昨日によく似た場所を
今もまだ走り続けてる

2010/05/23 (Sun)

[108] 星屑の花
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広き宇宙の
寂しさに
青き地球に
魅せられて
ひとり降り立つ
花一輪
痩せてまばらな
杉の原
風吹き抜ける
夕間暮れ
此処に居ますと
叫ぶけど
鬼も通わぬ峠道
心細さに身は震え
後悔ばかり先に立つ

寒さ厳しき尾根越える
同行二人の旅の僧
道に倒れて陽に焼かれ
風が弔う屍を
あはれと涙催して
手向ける花はないものか
青紫に頬染めて
風に震える
可憐さに
躊躇いがちに
手を合わせ
手折りし花を屍に
乗せれば不思議
血が巡り息吹き返し
尾を振る子犬

次第に意識薄れゆき
痺れ萎れて逝く花が
見上げた夜空
星々が涙に濡れて
祈るように
瞬きながら泣いていた

風に震えて夕間暮れ
枯れて大地の土となる
星の形の桔梗一輪

2010/05/20 (Thu)

[106] 空みたいな人
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ぼくだけでは
勿体ない程の
すっぴんの空だから、
みんなを等しく覆う
希望であって欲しい。
雨はしばしば
その顔を曇らせるけど、
泣いてる時ほど
萎れかけた
すべての生き物に
力を分け与えてる。
人知れぬ労苦が
重たければ重いほど
あなたは
澄んで晴れ渡る。
空っぽという名前が
あらゆることを
受け入れる証のように
何を語るでもなく、
ただ果てしなく
微笑んだままで。

2010/05/11 (Tue)

[105] あはれ
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黒髪、頭皮の
その下の。
頭蓋の奥の、
思考跋扈の温床。
例えば見栄て、
触れ得てさえ、
ぬらりと
捉え処なく。
うたかたに
うつつ抜かして。
朝霞の帳
隔てられては
味気なき薄ら茫洋。
いつかは果てる境、
手まさぐりに
痛痒の如く掴めぬ実体。
遊園回廊の影絵。
操る傀儡、四肢踊り。
縺れる肢体で
てんてこ一差し
舞う間隙も。
流るる星霜
いとどあはれに。

2010/05/09 (Sun)

[104] 我をば思ふや?
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ふたりで
とりとめなく
お喋りをしている時、

「私のこと好き?」

と中宮定子がふと
お尋ねになる。

清少納言が
「当たり前です、
何故そんな…」
と言いかけた時、
控えの間で、
他の女房が大きな音で
クシャミをした。

「あな、心憂。
空言を言ふなりけり。
よし、よし」

と仰って
定子は奥の間へと
入ってしまわれた。
たぶん、真顔で
聞いてしまった自分に
照れたのかも知れない。

好きに決まってる。
嫌いなわけない。
にしても、誰だ?
クシャミなんて
不粋なことするヤツは。
しかも
タイミング悪すぎ。
空気読めないにも
程がある。

おそらく当時、
定子は二十歳くらい、
清少納言は三十路を
過ぎたあたり。
主従という立場や
年齢の垣根を超えた
女同士の友情が
そこにはあった。

それから
5年足らずで
定子のお父さんの
道隆が亡くなり
彼女に変わって
おじさんの道長を
後ろ楯にした
従妹の彰子に
中宮の座を奪われる。
そして定子自身も
失意のうちに
25年の生涯を閉じた。

あとに残された
清少納言は
自分が
一番好きだった人の
栄華と没落を
知り尽くした上で
敢えて暗さを
微塵も表に出すことなく
軽いタッチで
枕草子を描き上げた。

われ、きみをば思ふ。


あっぱれ、
清原さん。
下の名前も
知らないけど、
1000年の時空を超えて
ぼくはあなたが
大好きです。

2010/05/07 (Fri)
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