ホーム > 詩人の部屋 > 都森 善太の部屋 > 投稿順表示

都森 善太の部屋  〜 投稿順表示 〜


[21] オービット
詩人:都森 善太 [投票][編集]


残されたテーブルの円形
深青に浮かぶ電線の平行線
ピカピカの銀色
写真家の笑顔

今日はやけに空が綺麗だから
軌道をなぞって
子供の頃に
何度も繰り返した夢を拾う
追人になって

2007/07/31 (Tue)

[22] マボロシ
詩人:都森 善太 [投票][編集]


それでも
知ろうとしない
月の陰影に何が沈んでいるか
その知識は全部
本に書いてある

本当の冷たさなんて
ただ眺めているだけで
本当は充分なのに
それでも
知ろうとする
知らなきゃ駄目だと
誰かに言われたから?

そして
押し付ける
痕を残すために

2007/07/31 (Tue)

[23] 鈍行
詩人:都森 善太 [投票][編集]


一秒の狂いもなく
一瞬の残光を残して
例えばそこに
迷いがあっても
行き先だけは
分かっている
つもり
立ち上がり
ゆっくり
ホームの向かい側に
別れの挨拶をして
行間も空けずに
電車が走り出す
歩くよりも速く
たどり着く
つもり
ようやく分かっているから

2007/08/04 (Sat)

[24] 君はきっと僕よりも速く泳ぐ
詩人:都森 善太 [投票][編集]


君はきっと僕よりも速く泳ぐ
まだそう思っていた
手がかりを無くして
この星の引力は半分になる
だからきっと
瞬きをしている間に
懐かしい街の夕暮れの空を
追い越して
空回り
届かない右手は
ひどく痛む

2007/08/05 (Sun)

[25] 月に跳ふ
詩人:都森 善太 [投票][編集]


初めて飼ったのは犬
真っ白なライカドッグ
月を目指して
燃え尽きた
軽くなったロケットは
ヒト科及び迷信的クラシック
満載にして
木星まで飛んだ
やがて
誰もいなくなった
寂しい青色から
ライカドッグは
月に向かって跳び立つ
そして
下らない進化に噛みつく

2007/08/11 (Sat)

[26] ビタミン
詩人:都森 善太 [投票][編集]


あの最後のひとことを
口唇に塗り付けて
なぞって

氷菓みたいだ
あっさり溶けた
にじんだ味は
甘すぎて

2007/08/12 (Sun)

[27] うしろむき白カラス
詩人:都森 善太 [投票][編集]


いい加減に
その止まった時間を
誰かに重ねないように
動き出すタイミングを
探すのは止めた

焦点が合わなくて
言い訳にも足りない
周回遅れで降りだした雨と
飛行機雲の季節

2007/08/12 (Sun)

[28] 電脳羊は夢を見るか
詩人:都森 善太 [投票][編集]


優しすぎるから
あの人は言った

それは理由にならない
僕は思った

同じような夢ばかり見たくて
夜にしか交さない挨拶も
不思議には思わなかった

わざと遺しておいた
忘れ物は何だったのか忘れた
タバコの銘柄を
変えた事は覚えていた

変わらないね
君は言った

それは理由にはならない
僕は思った

2007/08/17 (Fri)

[29] Light (Our Time)
詩人:都森 善太 [投票][編集]


沈んでいく
静かなさかな

そんな
同じ目をしていた
その奥は冷たくて

ガラス越しに
両手で愛を語る
複雑なサイン

心臓に一番近い
小さなスイッチ
探し合って
求め合って

同じような瞳に
お互いを撮す

2007/08/18 (Sat)

[30] 風鈴蝉
詩人:都森 善太 [投票][編集]


あれは風鈴蝉でありました

蚊殺線香のぐるぐる
紫の煙と染み付いた溜め息
吸い込んだマンションの壁紙
人に限りなく似せようと
足ばかり速くなった
二足歩行のロボットが
踏み潰して歩いた

あれは風鈴蝉でありました

ナツカシイナ
風鈴蝉しぐれなんていう
オサレな言葉も
昔はあったそうで
オマセなお子さん達は
一過夏を命がけで
恋に狂ったようで
脱け殻ばかり集めて燃やして
コトシハアツイナァ

潰れた駄菓子屋の前で
百円玉を握り締め見上げた


あれは風鈴蝉でありました

2007/08/20 (Mon)
149件中 (21-30) [ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 >> ... 15
- 詩人の部屋 -