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けむりの部屋  〜 投稿順表示 〜


[57] コントロール
詩人:けむり [投票][編集]

ワープロで打った文字のように
ブロイラーが整列させられて
卵を産む

軍隊で新米を鍛え上げるように
大型犬がルールをたたき込まれて
めしいにかしずく

ぬいぐるみを可愛がるように
ウサギがふれあい広場で次々と抱かれて
野生ウサギの十分の一の寿命を終える

ぼくは産まれながらによごれているの?
もう
卵も 犬も ウサギも 大嫌いだよ

山を下りてきた熊が射殺され
BSEにかかった牛が処分され
怪我をした競走馬が薬殺される

ぼくたちは神様なの?

トキが人工繁殖され
ブラックバスがキャッチアンドリリースされ
ペットが手術される

神様 ぼくたちは神様なの?

ぼくは今日も好き勝手やったよ
春の匂いが気持ちよかったから
いつもよりたくさん笑ったよ
だけど
これも
誰かのコントロールなの?

だとしたら
そら恐ろしくて
笑えないよ

2005/04/17 (Sun)

[58] ブルー・ロージス
詩人:けむり [投票][編集]

恋人たちは
愛がなにかも知らないで
優しさばかりを持ち寄って
二人ぼっちになっていく
溶けるほど 抱き合ったり
将来なんかを 語り合ったり
他愛もなく
笑い転げて
会話の合間に キスをしたり
手を繋いで 眠ったり
二人の真ん中に
世界の真ん中が
あると思ってる
素敵に
かわいく
愛を 遊んでる

2005/04/11 (Mon)

[59] サボテンにジャムを塗る
詩人:けむり [投票][編集]

無償の愛などないよ
人のためにする行為は全て
見返りを求めてのことだから
母さんはぼくに期待する
すばらしく立派になってほしいんだ
いつか父さんよりも偉くなって
上手に教育したことを褒められたいんだ
ときどき
ぼくはこっそり悪いことをする
きっと許してもらえないくらい悪いことをする
テストでいい点数が取れなくて
イライラしているときなんかにね
だってぼくは百点を取って
母さんにギュッと抱きしめてもらいたいのさ
愛されたいなら頑張らなきゃ
だけどいつか
ぼくはぼくをギュッと抱きしめてあげたいんだ

2005/04/12 (Tue)

[60] ぼくは大人になっていく
詩人:けむり [投票][編集]

ぼくは大人になりきれないよ
子供と大人の違いが
なんなのか
なんてはっきりとは分からないけれど
ああ!
大人って人らはぼくを傷つける
だけどぼくだってもう子供じゃないから
荒波にたえるコツを
覚えてそれを活用しなきゃいけない
海と空の先に地平線があるように
夢と現実の境界を理解しなければいけない
あこがれと目標を区切るんだ
そして合理的に
笑ったり悲しんだり
成長したり挫折したり
するのさ
大人として
子供から見て
模範的な
大人として

2005/04/15 (Fri)

[61] なんとなく自殺未遂
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かろうじて目が覚めた
それは幸運?
さあてね
今日すっぽかした雑務のツケを
明日片づけなきゃあな
大した覚悟もなくオーバードーズした
しこたま眠ったが寝覚めは最悪ね
ぬけきってない眠剤にひどく心身が重い
明解な理由なんてないけれど
しいて言えば
イライラしたから…
とりあえず煙草で一服
味わいは悪くないね
記憶のかなたが呼び覚まされるような苦み
思い出す幸せなんてないけれど
かといって絶望を再認識するわけでもないや
さあてこれからなにをしようか
ゴロついてりゃ二度寝できそうだけれど
一人でいると滅入るだけだから
当てのある奴に連絡つけて
メシでも食いに行くか

2005/04/16 (Sat)

[62] ダイアモンド
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どこかで誰かは求めてる
この頼りなく弱っちいおれを

おれは簡単にヘコむ
すぐにいじける
叱られたことを何日も引きずり
バカにされたことを延々根に持つ

だけど聞いて
おれはダイアモンドを持っている
ちっさくて
黄ばんでいるが
ダイアモンドはダイアモンドだ
けっして誰にもゆずれない
胸の真ん中で光ってる
ダイアモンドだ

どこかで誰かが待っている
いつかおれが王子サマになって現れる日を

大金持ちにもなれない
英雄にもなれない
おれはおれで生きていくだけ
特別な奴なんかじゃあけっしてないけど
誰かがおれを捜してる

おれは産まれてきたのさ
父と母が愛し合い
おれがおれとして産まれてきた
その天文学的確率

おれは産まれ
おれとして生きている
愛し合うために
お姫サマと巡り会うために
おれは産まれた

どこかで誰かが待っている
そしてやがて出会う
おれたちは共鳴している
二人は今すでに惹かれ合っている
その確かさこそが
この胸が鼓動するわけさ

2005/04/18 (Mon)

[63] ザクロ
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数えてくれぼくの鼓動を
鍵を持たない耳をこのザクロのような胸に当て
ひっきりなしに毎分の心拍数を数えろよ
知るんだ!
このぼくがどれほどおびえているか
表情を失った顔の奥でどれほど恐れおののいているか
おお おお 時が経つということを!
ぼくは年齢に見合った成長をしてきているだろうか
振り返れば ああ! 数え切れぬ可能性が腐敗してしまった
無惨な! あせりはつのるばかりだ
ぼくは白濁とした霧モヤの中でもがいている
帰り道など始めからない中で
だがぼくは割れたザクロの実のように猛るのだ
今なお心は絶対的な平穏を求めて歩みを助長する
その先には真の安らぎがある
それを望まずしてなにを望めばいいというのか
ぼくは魂の楽園を探す旅人だ
そこは確信的な問いと答えのみで形成されている
この途方もない迷宮には必ず出口がある
なぜなら出口のない迷宮をさまよう生命はすでに
時間に支配されるという生命としてのの責務を果たしてはいないから
だからこそまたぼくは恐怖するのだ
聞け!ぼくのこの胸の震えを
当てもなく出口を探しさまようこの恐ろしさを
だがぼくは生きる限り求め続けるだろう
安心が約束された中で静かに暮らせる日々を

2005/04/19 (Tue)

[64] ぼくの全てが分かる
詩人:けむり [投票][編集]

始めて心を許した友達が
「コーヒーを煎れるよ」
とほがらかに笑った
ぼくはひざをさすりながら
「砂糖もミルクも入れないで」
とぎこちなく笑って返した
友達は分かっているよといった表情で
やわらかくうなずき
ぼくは背筋をただしながら
窓に映るまぶしい青空に目を細めた
腕にはめたアナログ時計が静かに秒針を刻み
床に散らかったゲーム機は
まだコントローラーに繋がったぼくたちを
覚えているみたいだった
友達は『楽園の征服』を鼻歌で歌い
ぼくは人さし指でリズムを取りながら…
若葉の萌える春の匂いが ぼくたちを包み
うららかな昼下がりに
ぼくたちは同じものを思い描いていた
それはきびしい密約だから
ぼくたちでさえ口に出来ない
けれども同じ瞬間に目を合わせ
照れくさくも確かさを認め合い
酸味の強いモカコーヒーの香りに
とろけて 心と心は二人っきりで
はかなくも果てしなく広大な糸を 見ていた

2005/05/01 (Sun)

[65] 渡り鳥と家畜
詩人:けむり [投票][編集]

花々が色彩を競い合っている
香りに満ちた庭園に
一羽の渡り鳥が迷い込み
劇的な不幸だが
物思いにふける家畜に出会う
空は無限の螺旋のようにどこまでも青く
渡り鳥に恐れることなどなにもなかったが
家畜の 安穏だがもの憂げな眼差しに興味を持ち
羽を休めることにした
渡り鳥と家畜
それはあまりにも生き方が違う
それゆえに話は弾み
そして幸せについて二人は考える
一方には不自由だが日々こと足りる生活があり
一方には自由だが危険をともなう生活がある
それは相反するものだけれど
どちらにも満足と不満足がある
お互いはお互いをもっと知りたくなり
恋に堕ちた

二人は
むさぼるように
足りないものをおぎなおうと
求め合う

渡り鳥は家畜が繋がれた庭園にはない花を贈った
家畜は庭園の中でよく毛虫がつく樹を教えた
お互いは二人でいれば幸福だと感じ
かけがえのないものを見つけた気がする

けれどもやがて季節は移り
季節に殉じて庭園から色ははがれ
風にはうれいがこもり
渡り鳥には飛び立つときが訪れる

二人は来年の初夏に再会することを約束する
けれど家畜は守れないことを秘密にしている
やがて渡り鳥は北風に乗って南へ飛び立ち
家畜は一人 物思う
幸せの頂点で終わる生涯と
思い出を熟成させる生涯と
どちらがより哀しいだろう
どちらがより罪深いだろう

二人の思い出を木枯らしがからかい
二人の思い出を雪がおおう
静かに時は流れ
やがて春は訪れ
雪解けとともに草木はいっせいに芽吹き
庭園には今年も色とりどりの花が咲く
あの樹には今年も毛虫がよくつき
その下で去年はなかった花が咲く
風はゆるやかに 南から吹いている

2005/05/09 (Mon)

[66] 安ゼリフのオンパレードバラード
詩人:けむり [投票][編集]

ねえねえ知ってる?
遠い遠い空の向こうに
誰も知らない楽園があってね
そこでは優しい人ばかりが
幸せばかり育んでいるんだって
連れて行ってあげたいよ
ぼくのかわいそうなブルーパンジー
自分で自分をつらい方に追い込んで
かわいそうさを演出してる
そうしなきゃ優しくしてもらえない気がしてる
そしてそんな自分に冷め切ってるぼくのレモンパイ
強く強く抱きしめるさ
ちょっとのことでもたくさん褒めるよ
とんでもない事態に出くわしたって守り通すさ
心配することばかり学んでしまった
でも絶対に幸せになれるぼくのフォーチュンクッキー
でもね
悲しいことにぼくは無敵のヒーローじゃない
臆病で不器用で弱虫さ
だからこれからぼくが言うことをよく聞いてメガトンイヤホン
この広い広い空のどこかに
誰も知らない楽園があってね
そこでは優しい人ばかりが
幸せばかり育んでいるんだよ
もしもぼくがちっとも頼れなくて
ひとりぼっちに戻った方がマシって思っても
ラブリーロンリーレディー
きみを歓迎してくれる
素敵な町があるんだよ
けれど
ぼくのビューティーキューティー
無敵じゃないけれど
ぼくはいつだってきみのヒーローになりたいんだよ

2005/05/19 (Thu)
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