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秋庭 朔の部屋  〜 投稿順表示 〜


[57] サンドバッグ
詩人:秋庭 朔 [投票][編集]


殴り方
間違えると
自分の拳と手首
傷付ける

ここは痛い?
ここは…?

殴ってる本人が
涙ぐんでた

たとえ強烈な
ボディブローの連打
浴びるように喰っても
相手がきみなら
立ってられる気がする

ノーガードで
ゴングが終わり
告げるまで

そして
最期に
軽く肩を抱いて
好きだったと
言ってくれ
そこでやっと
ぼくはさよならを
置いていける

2008/01/09 (Wed)

[59] チョロQ的生き方
詩人:秋庭 朔 [投票][編集]


持久力には自信ない
瞬発力で走り切る

ダッシュで駆け抜け
ナンバー・ワン奪取

ベタはキライ?


後退は
前進のための
動力源

屈伸は
伸身のための
活力源

反省なんかしない
後ろに下がっても

難しいことは
ひとつもない

真っ直ぐ前に
突き進むだけ

蓄えたエネルギー
一回一回使い切る

ゼンマイでもドンマイ

ベタはキライ?



オィ、チョロQ!

ん?
誰かボク呼んだ?

2008/01/10 (Thu)

[60] にっ!
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イマドキ
黒くて
真っ直ぐの
長い髪
細目のメガネ

おっきめの口
横に拡げて
にっ、て笑う

にっ、て

なんでそんなに
無垢な笑い方できるの?
まるでコドモみたいだ


もう他には
なんにも要らない
ぼくの役目は
それを守ることだって
やっと気付いた


ぼくも笑って
ピースサインを返した

にっ!

2008/01/15 (Tue)

[61] なでしこの花
詩人:秋庭 朔 [投票][編集]


ある夏の日の夕暮れ
外回りから帰り
事務所のドアを開けると
すぐに部長が
大きな声で
ぼくの名前を呼んだ。

背中を向けて
キーボードを叩いてた
彼女が、
弾かれたように
顔をあげ、
こちらを振り向いた。
まるで機械仕掛けの
おもちゃみたいだった。

君を呼んだんじゃない…

部長が生真面目な顔で
彼女に言った。

薄紅色に染まった
彼女の顔を見て
みんなが
声をあげて笑った。

あの時確かに
ぼくの中で
何かが動き始めた。


彼女は長い間
ただ待ち続け
何も求めなかった。

だから、ぼくは
全部あげたくなった
のかも知れない。

2008/01/15 (Tue)

[62] きざし
詩人:秋庭 朔 [投票][編集]


くちびるに指を当て
粉雪が夜に忍び寄る

朝になれば
すべて覆い尽して
世界を白く
吐息色に変えるだろう

明日が見えないうちに
想い出が降り積もり
ぼくらを
動けなくしてしまうんだ

手を繋ぎ走り出せば
直ぐに転んでしまう
知っていながら
想いだけが羽ばたいて
夜空を翔け巡る

Darling
Darling
コドモとオトナの挾間で
もどかしさが
言葉を縛りつける

もっと近くで
見ていたいのに

手を伸せば
壊れてしまう
知っているから
願いだけが膨らんで
祈りの形で凍り付く

Darling
Darling
コドモとオトナの挾間で
せつなさが
心を締め付ける

夜明けが訪れる前に
不安が降り積もり
ぼくらを
動けなくしてしまうんだ

手を繋ぎ走り出せば
直ぐに転んでしまう
知っているから
想いだけが揺めいて
夜風にただ震えてる


Darling
Darling…

2009/03/05 (Thu)

[63] パーかっしょん
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ココロが
空っぽだカラ
打てば
自由自在に響く

トン・スト・スト・トン


刻むリズム
弾むテンポ

音の世界が
無限に拡がって
空に融け込んで


トン・スト・スト・トン

何もないソラ
カラだから

どれ見は空色
どしたらよかろか

2008/01/27 (Sun)

[66] ヤツの生き方
詩人:秋庭 朔 [投票][編集]


叩かれても
軽く弾んで
凹んだって
すぐ元通り

カド立てず
柔らかくて
ふにゃりと
心和ませる

汗にまみれ
泥に汚され
踏まれても
自由気儘に
テンテンと
転がってく


道で拾った
ゴムボール

2008/02/04 (Mon)

[73] サムライ・ガール
詩人:秋庭 朔 [投票][編集]



後ろ髪
引かれぬよう
アップにして
前のめりに

ピンヒールは
護身用

やさぐれても
曲がること覚えて
強くなれた

サムライ・ガール
昭和生まれの


女だからと
ナメられぬよう
ダークスーツで
シブくキメて

ピンでヒール役
逆風受けて

酔いどれても
かわすこと学んで
しなやかになった


過去を袈裟斬りに
明日腹切る覚悟で
今日を生き抜く
凛々と

サムライ・ガール
昭和生まれの

2008/02/27 (Wed)

[74] 別れのワルツ
詩人:秋庭 朔 [投票][編集]


チョピンて?

ショパンて読むの

バッチて有名な人?

バッハね
ワザとでしょ?

楽譜読める人
オレ尊敬する

でも、人の心は
読めない...
ね、結婚しない?

いいよ?

嘘つき

なんで?

その気もないくせに

...はい、これ
あとはきみの名前書いて
市役所出すだけ

...こんなやり方
卑怯よ

卑怯?

またあたしに
あなたを選ばせるつもり?

ぼくがきみを選んで
きみがぼくを選んだ

違う
あなたは
あなたを好きなあたしを
選んだだけ
あなたは
自分のことが
一番大事な人

ぼくに
どうして欲しい?
ぼくはどうしたらいい?

もういい




ひとりで本屋さんを出た
ショパンの
「別れの曲」とか
弾きながら彼女
泣いたりするんだろうか

月だって満ちたり
欠けたりするさ

見えない月の代わりに
水銀灯がぼくの陰を
舗道に落としていた





2008/03/03 (Mon)

[75] 卒業
詩人:秋庭 朔 [投票][編集]


「学校また行けば?」

「実はそんな話も
あるんだ…」

エントランスに
アーチのある白亜の校舎

ネットの画像で見る限り
自分も入学したくなる
くらい立派な学校

彼女は再出発の場所を
自分で探し出し掴んだ


「何故か番号あったよ」
素っ気ない
言葉の行間から
押さえ切れない喜びが
溢れてた
「やったー!
やりやがった」
不安を潜り抜けた
嬉しさで、ぼくも思わず
叫んだ

合格おめでとう!



あれから4年
彼女の友だちは
今年3月卒業式を迎えた

彼女は
その場にいなかった
もうこの世にもいない

あの時
長いと感じた未来が
呆気ない程に短い過去
として脳裏を去来する

瞬く間に
流星のように輝きながら
翔け抜けていった
その光の緒は
煌めきを放ったままで
ぼくらの心の宇宙に
刻み付けられた
永久に変わらぬ姿で

2008/03/06 (Thu)
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