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在音の部屋  〜 新着順表示 〜


[10] 焼けつく目蓋
詩人:在音 [投票][編集]

初めて東京に行った時
街に近づくにつれ 電車の窓から
空が黒くなっていくのを見て
涙を流した

その夜
星が見えない赤々と燃える空を見て
母の手を強く握り締めた

雨の日は 黒い霧に覆われた
頭の見えないビルを見て
地上ぎりぎりまでに 落ちて光る雷に
怯えて身体をすくめて歩いた

雑踏の中
人々が踏みつける花の下を覗き
埃にまみれた月を 熱い と感じた

でも 月日がたつと
青と黒 の区別がつかなくなり
僕も花を踏んでいた

何かを失う時はきっと痛いのだろう と
思っていた僕は
いつの間にか痛みを感じなくなっていた

そして
焼けたアスファルトの上を
削ぎ落とされた顔で歩いていた

2004/12/16 (Thu)

[9] 忘却の時
詩人:在音 [投票][編集]

19の夏 肩まであった髪を切り
スキンヘッドになった

今まで着ていた服を捨て
黒い服ばかり着て サイドゴアのブーツをはき
目の色をグレーに変えた

片方に7つのピアスを開けて
黒 闇 虹 と言われる人達の住む
街へと足を運んだ

学校の先生は 初めて僕の頭を見たとき
愕然として 紅い口紅を
固まらせていたのを 今も覚えている

きっと心が病んでしまったのだ と
周りの人は そう言ったけれど
新しく迎えてくれた 街の住人達は
微笑みながら 僕の頭を撫でてくれた
強くなれ....と

まだスキンヘッドが流行っていなかった頃
黒一色になっていた僕は
通り過ぎる人々が振り返って見ていても
何故か 真っ直ぐに歩く事ができた

知らない 写真家に
被写体になってくれ と言われて
雑踏の中 1枚写真を撮った

それがどうなったのかは 知らないけれど
僕の時間が1枚 切り取られていった

2004/12/16 (Thu)

[8] 真空管
詩人:在音 [投票][編集]

東京 という石で出来た街の住人だった時
何処よりも 1番綺麗だ と思ったのは

埃と毒と雑踏で 紅く染まったクラゲ(月)と
それらを吸い上げて 浄化したかのように

無感情な

まるで 真空管の中で呼吸をしていると 感じた
意味のない 朝焼け 

2004/12/16 (Thu)

[7] 眠れない夜 風が窓を叩き
詩人:在音 [投票][編集]

君が僕の隣で あの時のままの姿で眠っている
また君の寝顔を見られるとは
正直 思ってもみなかった

昔と変わらず 微かに聞こえる寝息と
柔らかい髪は 変わってはいないけれど

目を開ければ 僕の知っていた君ではないんだね

何があったのか 僕には話せないコトばかりなの
もう君とは 僕達 ではないんだね
それは 仕方のないコト なのだろうか

僕への思い は 僕からの思い よりも
はるかに弱くなってしまっている

目を開ければ 僕の知っていた君ではないんだね

これから 僕との時間 は
浸食されていく海岸のように
いづれは 全て消えてしまうのかな

君は僕の隣で この視線に気付くコトなく眠っている
君の寝顔を 今度は何時見れるのかな

2004/12/16 (Thu)

[6] 2つの世界
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光の住人と闇の住人 に例えたら
自分はどちらだと思う

光の住人は 自由 に歩き
恐怖や不安を感じない といわれ

闇の住人は 踵の下で途方にくれる と
言われるコトが多いけれど

でも よく考えて

真っ暗な世界にいても
そこに 塵のような光 がさしたら
きっとそんな光にでも
希望 を感じる事ができるかもしれない

けれど
光が反射する 真っ白な世界にいたら
眩しくて 目蓋を開けることができないから
結局何も見えずに
身動きが取れないまま
閉塞感 と 失望 を 感じてしまうものなんだよ

トリカゴの中の住人だった頃
僕だけに教えてくれた 貴方の言葉

2004/12/16 (Thu)

[5] もし本当に神様がいるのなら
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何かに立ち向かおうとしている人の手に楯を
何かから逃げなくてはいけない人の後ろに壁を
何かの痛みに耐えている人には温かい毛布を

何かを守りたいと願う人の後ろに風を
何かを捨てたいと願う人の足元に炎を

誰かに会いたいと思っている人には空を
誰にも会いたくないと思っている人には海を

誰かに強いられている人には靴を
誰かを縛りつけていても気付かない人には耳を

純粋な表現者達には惜しみない拍手を

愛情を注ぐ人の周りには防人を
愛情を犯意で使う人の周りには犬を

人間に壊され続けているモノには反撃の機会を

願う事しかしない僕に貴方の no という言葉を...

2004/12/16 (Thu)

[4] 壊音
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心が壊れて 崩れ落ちる瞬間を
人は何かが壊れた音がするという

けれど 本当に壊れた時には
何の音も聞こえず
誰の言葉も聞こえなかった

僕は鉄格子のある部屋の中
何人かの看護師に抱えられて
ベッドに運ばれると
酸素マスクと点滴と安定剤をうたれて
手足を縛られた

時間がたつにつれて
聞こえて来た 看護師の言葉は
無表情のまま ラクニシテアゲルヨ と...

僕は 言葉にならない声をあげ
目を見開いたまま 涙を流していた
そして
幾度も交差する 白い服をぼんやり見ていた

不安も恐怖も何もなく 縛り付けられた僕は
冷たくなってゆく身体を
温めることもできずに
感情をなくした

2004/12/16 (Thu)

[3] 
詩人:在音 [投票][編集]

僕は今日も白い天井を見つめている
この部屋の窓には鉄格子
10cm以上開くことはない
空や鳥が見たくても
決してここからは出ることが出来ない

冷たいタイルに広い浴槽
泳いだり 潜ったりするけれど
ガラス窓の外には
何時も見張りがついている

自由な所なんて嘘っぱち
ここには何もないんだ
何も出来ないんだよ

1日3回 薬の時間
注射で皮膚は硬くなり
血を抜き取られていても
抵抗する力すら残されていない

鍵付きの夜に 凍えるベッド
本当に僕は夢を見ているのだろうか

淡々と流れていく時間
安全と言う 隔離された時間
何故みんな笑っているの...
何故みんな笑っているの...

知らない人から見ればきっと夢の世界
でも 来てはいけない異端な世界
本当に僕は安らげるのだろうか
明日は今日よりはマシだろうか...

誰かが歌を歌いながら彷徨っている
誰かが知らずにまたここにやって来た

廊下にかけられたカレンダーには
日毎にバツ印が刻まれていく
多くの人達は 
今日が何曜日か なんて考えてもいないのに

ゆっくり羽を休めればいい
ゆっくり傷を塞ぐといい
ここには誰も貴方を傷つける人はいない
ここには誰も僕を傷つける人はいない

でも 本当に
僕は安らげるのだろうか...

2004/12/16 (Thu)

[2] 螺旋虫
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新月の夜 夢を見た

この世界の住人は 死ぬと
天国に行くことはなく
星や大気 塵にもなれずに
一匹の醜い虫に変化する

その虫は
地中深くに落とされ
人間として生きた という
大罪を背負って
地上のまだ見知らぬ人の踵の下で
苦痛の声をあげる

そして
僕も虫になり
泣きながら 削れて行く指を使って
土を掘り進む
空へ向かって 恐怖に震えながら...

それから少ししたある日
僕は 
睡眠をとるというコト は
人間が犯す 1つの罪で
それは毒であり 現実逃避であり
存在を放棄するコト なのだと考える

だからその日から7日間の間
僕が眠ってしまった時間は
1時間だった

8日目の朝 僕は
睡眠をとらないというコト が
罪だと感じて
できることなら このまま
心臓が止まってくれればいいと
7日間眠り続けようとした

でも 結局は
5時間程目を覚ましてしまい
そうまでして生きようとする自分に
後悔と罪悪感で いっぱいになった

昨日 沢山の人が
空から落ちてきて
この街が 石榴で埋もれる夢を見た

石榴が地上に落ちる音は
しおれた木蓮の花びらが
雨と風にあおられて
アスファルトに叩きつけられた音に
とてもよく似ていた

そして 夢の中で僕は
心地よい風が
頬を撫でた時のように
その光景を見ながら 微笑んでいた

2005/02/21 (Mon)

[1] 白い鴉
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子供の時から
貴方達に殴られ続けた僕
多分 僕だけが悪い から
そうなるコトは当然だと

世間では皆 子供達はそうなのだと
ずっと思っていた

僕と同じ

吐き気で眠れないほど殴られたり
鼻血がでるほど蹴られたり
モノが壊れるまで叩かれたり
生むんじゃなかった
頼むから死んでくれと言われたり して

子供達は生きているのだと...

学校や病院で嘘をついて
貴方達から付けられたアザと言えなくて

大人になってもトラウマで
未だに続いている 貴方の子供という儀式

全て悪いのは僕
貴方達が死ぬまで続くのかと思うと...

貴方達の方が
僕よりずっと 長生きできるよ
きっと...

2004/12/14 (Tue)
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