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千波 一也の部屋  〜 投稿順表示 〜


[1274] 凍れる花
詩人:千波 一也 [投票][編集]


一瞬を

その身に
耐えうるだけの一瞬を
凍れる花は
抱き締める

その
抱き締める力に比例して
花の強度は
もろさを
高めて

誰、と決めずに

凍れる花は
誰、と決めずに
いずれの手にも
砕かれやすい



2014/03/22 (Sat)

[1275] 望遠鏡
詩人:千波 一也 [投票][編集]


遠くを見ていると
そこに至るまでの道のりが
ないもののように
錯覚してしまう

けれど
その錯覚が
誤りだとは言い切れない
正しいこととも
言い切れない

わからないことを
わからないままにして
のぞき見る鏡には
いったい何が
映るのだろう

いったい誰が
見ているのだろう



2014/03/22 (Sat)

[1276] 雪わたり
詩人:千波 一也 [投票][編集]


雪のなかにあらわれる
物語
色もなく
声もなく
ただ
ただ
素直な物語

わたしの指に
たとえ消えてしまっても
物語までは
なくならない
それが


誰かの灯りに
彩られたとしても
物語は
かわらない
それが


辿り着いた地面から
ふたたび
そらへと
流れはじめても
物語は
まよわない
それが


わたしの
そとに降り積もる
物語は
わたしの
うちにも降り積もる
居場所を告げず
しるしを告げず
ただ
ただ
しずかに
物語であることを遂行して
いつか、
やがて、と
わたしを
揺らす




2014/03/22 (Sat)

[1277] 水の冠
詩人:千波 一也 [投票][編集]


水に編まれた者たちは
銀の縛りを解きたく
銀の向こうの
金色を請う
その
或る種の隷属がもたらす
透明な階級

整い過ぎた軋轢を
整え切れぬまま
王冠は
かろうじて
霧の中に浮かび上がる
錆びることは許されず
朽ちることも許されず
悲しみの意を
問えぬ身として
悲しい者たちの
頭上に
座す

古びた時計が告げるのは
まったく褪せないものであり
まったく褪せたものでもあり
まったく生まれたばかりの
ものでもあるから
沈黙は花となる
描くに値する
花となる

水の法の下に
すべての差別は寛容され
同様に
撤廃を促されもする

水に編まれた者たちは
自らを省みるすべを
知り過ぎた挙句に
その
底辺ばかりを
見つめてしまう
それは
必ずしも
頂に
背くことではないけれど




2014/03/22 (Sat)

[1278] 闘いと呼ぼう
詩人:千波 一也 [投票][編集]

懐かしい、温かな風は
もういない


はしゃいでも、ひとり
つくろっても、ひとり

つぶやくほどに、
黙り込むほどに。


嘆いたら、塞いだら
すくわれる、かな

我が身かわいい、と
まもりに徹すれば
すくわれるかな


だけど、
もしも、
きっと、

水をはらんだ
言葉のかたすみに
わたしを立たせる日々が
みえる限りは
まだ、やめよう

せめて
わたしだけは
呼んでいよう

ひとりぼっちでも、
これはわたしの
闘いと。


2014/03/22 (Sat)

[1279] 直感
詩人:千波 一也 [投票][編集]

案外
やさしいことだろう

冬のおわりを思うのも
春のたよりを受けるのも

案外
やさしいことだろう

夏のかげりを思うのも
秋のかたりを受けるのも


案外
やさしいことどもは
大方するり、と逃げるから
わたしの直感ははぐくまれやすい


ささいな願いに
傷つきながら
ささいな願いで
傷つけながら

ささいな成就に
満たされながら



2014/03/22 (Sat)

[1280] 吹雪
詩人:千波 一也 [投票][編集]

吹雪はなにも砕かない

非力な命を
かばう言葉が
吹雪をいつも悪者にする



吹雪はなにも奪わない

及ばぬ知恵を
たすける言葉が
吹雪をいつも罪人にする



吹雪はなにも残さない

叶わぬ受容を
いたわる言葉が
吹雪をいつも魔物にする


2014/07/29 (Tue)

[1281] 冒険者たち
詩人:千波 一也 [投票][編集]


冒険者たちは
いつも渇いていて
雨や
波間に
漂いやすい

けれど
冒険者たちは
それらの雨や波間について
潤いだとは語らない

なかなかに認めない
強情さがある

その強情さが
自らの弱さを深めてしまうけれど
冒険者たちは
みていない

いや
みていないふりをして
わずかな辛抱に
わずかな辛抱の重なりに
耐えかねて
なおさら
渇いていく

そんな悪循環に
同情した者たちや
辟易した者たちや
共振した者たちや
陶酔した者たちが
また
新しく
冒険に出る

冒険者たちが先か
旅が先か

冒険者たちは
もちろんその答に拘らない

ただ
渇いている己のために
癒しを求めていく

永遠をかけても
満たされないかも知れない予感を
そっと包み隠しながら
冒険者たちは今日も
古びた地図を広げている



2014/07/29 (Tue)

[1282] いつか、降る
詩人:千波 一也 [投票][編集]

いつか、降るだろう

雨とは呼べない
くるしい水や

雪とは呼べない
つらい花弁が

いつか、降るだろう

きっと
だれもが望む形は
思いがけずに
姿をかえて
しまう

おそろしいものたちと幸福は
些細にしか違わないのだろう

だれもが望む形は
だれもが忘れてしまえる形
だれもがかえてしまえる形

嘘も真実もなく
終わりも始まりもなく

だれもが平等に
描けてしまう
語れてしまう

だから、降るだろう

星とは呼べない
あわれな営み

月とは呼べない
うつくしい陰

こころ当たりはないか

きみに
きみの周りに
きみの周りの
きみに

鳥とは呼べない
閉じられた夢

風とは呼べない
偏重の記憶

いつか、降るだろう

憂いと妬みと自己愛と
逃れと責めと他人顔

頼みと縛りと自己愛と
秘匿と保守と他人顔

ひとつの国が
ひとつになることは
難しいことではない

固まり方さえ
問わないのなら
難しいことではない

けれど

涙とは呼べない
大粒な渦

嘘とは呼べない
周到な罠

いつか、降るだろう

いつか、と言わず
もうじき、
すぐにも、
落とされるかも知れない

慣れてしまえば良い、と
言えなくもない

完全には

だれも
完全には
道をたどれないまま

鏡とは呼べない
出来すぎた坂

己とは呼べない
出来すぎた虚ろ

このままでも
このままでなくても

それは
さほど意味をなさない

意味をなさない
差異ならば

いつか、降るだろう

いつか、必ず

いつか、疑いの余地もなく

いつか、だれにも平等に

降るだろう

伏すだろう

いつか、






2014/07/29 (Tue)

[1283] 選択肢
詩人:千波 一也 [投票][編集]



言わない、っていう気持ちは
選択肢

だけど

言えない、っていう有り様は
選択肢にならないね

さかのぼれば
選択の末の有り様だと
わかるはずだと思うんだけど

選択肢にはならないね



2014/07/29 (Tue)
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