こんなにも
「優しさ」に餓えていたんだな…と
痛感した。

それと同時に
塞き止めていた何かが切れて…怖くなった。

「逃げていい？」

「逃げらんないよ」


鬼ごっこしようよ。

捕まえて

けど

きっと

逃げ切るから

消えてほしいだとか
ムカつくだとか…

こっちの台詞だと思うよ

何をされても
何を言われても
笑うだけなら
そりゃ生身の人間じゃなく人形じゃないか

感情があって
気持ちがあるから
人間なんじゃないか

私の中の
ってよりは 人の中の
生まれた時から 変わらぬ綺麗な泉に

いとも簡単に
有害物質を投げ込んだのは
あなたじゃないか…

苦しめばいい
とか
生き地獄を味わえ
だとか

これ以上 底をなくして
追い詰める必要があったんだろうか…

話す勇気も持ち合わせず
逃げてばかりで
遠くから 毒のついた弓を射る

私には
君が何に傷ついたのかわからないんだ
私の心を踏みつけて起こした君の行為に
私は何を謝罪すべきかわからないんだ

ほんの少しの安らぎだったよ
待ち焦がれていた安らぎだったよ
これが私たちが作り上げた「普通」なんだと

あなたが泣きながら
欲しがった普通を
少しずつ作り上げてると
信じていたんだよ


私に言わせたかっただけじゃないか
辛く悲しい一言を
勇気のないあなたが
私になすりつけただけじゃないか

私の泉を枯れさせ
心を踏みにじり

あなたの望む結果に
なっただけなのにね

私が許せないと思っても

あなたにそんなことを
思われる筋合いはないよね

なってる(笑)

でも
私 一個ルール作ったよ。

「よく来てくれたな」
そう言ってくれたのは
一週間前の話で

今 此処に横たわる
貴方は
苦しみから解放された
脱け殻



家の回りには
何十個もの花輪
生花と祭壇
短剣を胸にかざした
貴方が北枕で眠る

ザワザワと
弔問客が訪れては
時折啜り泣く声が聴こえる

硬くなった手足を解して
真っ白な足袋を履かせた
白い着物を着せて
途中の船賃にと
穴のあいてない
硬貨を足元に捧げた

何処に行くの？
何処に向かうの？

写真の伯父が
「今は教えない」
そう言った気がした