詩人:凪都 | [投票][編集] |
頭からかぶさる
太陽のブランケットに
一つ眉間にシワを寄せ
転がるように歌う
アスファルトに一人
下駄のリサイタルなんて
誰も聞いていない
道路の彼方
蜃気楼に手を振られ
そうな気がする昼下がり
左手に握った
一昨年買ったスコップ
まだ土に
濡らしたことが無い
揺れる地平線
黙して熱中症
行き倒れの昼下がり
今年も濡らせじまい
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取り留めもなく
時の流れに相を槌つ
音を拾う耳
零して零して
小さくなった落とし者
両腕は
君に残すよ
名前は
置いておくよ
心はあちらへ
捨ててくるよ
君へ口付けた
身体だから
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今日も朝日は
触れない私より
優しく君を撫で
包み込むだろう
不透明でさえ
ゆっくり温められる
そんな太陽を
憎く思う事はない
笑う私に君は
冗談混じりに呟く
「偽善者め」
皮肉に嗤って溜め息
本日は快晴
緩い寒波は
今からどこに?
風は吹き抜け上空
見えない渦を巻いて
誰かが指差すのは
いつでもその後ろ
それでも良いと言う
君は私が
嫌いではないらしいが
少し
呆られて
しまったようだ
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細めた眼で睨んだ先
眼鏡を二つに分けた両手
無くたって大丈夫
修理はいらない
クリアを失った
霞んだこの景色
それだけの事
たったそれだけ
私は必要性を問おう
その口は
いらないと吐き
その口は
なくとも大丈夫と吐く
しかし
その舌は
何を知っている?
不必要で良い
理由の一つも言えない
とんがる唇なら
軽くつねり上げてやろう
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やがて街は染まる
朝を告げる白い光に
その頃の私は目蓋裏の夢と
談話を交わしているだろう
私はとても幸せだと知った
だからこの幸福と同じ光が
路地裏の闇に飲まれた
あの花にも届けば良い
黒しか知らないあの花に
眩しすぎる光が届けば良い
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夏は暑いって
決め付けじゃなくて
当たり前だと思う
八畳一間の熱空間の中
吹き出す汗の止め方も知らず
ただただ流れるだけ流して
喉から零れる無意味な「あ」と
狭めた視線全部ひっくるめて
本日も扇風機と睨めっこ
しかしコイツはすぐそっぽ向く
ボタン一つで視界を固定
それは何と言えば良いのか
羨ましくて恨めしいそう
押せなかったボタンに
まだ見ぬ誰かを思った
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セロハンなんか貼った風船
貼ったセロハンの上から
針を刺したら割れないらしい
じゃぁ君は
セロハンで針か
割ったら煩わしいか
音に?違う
いや、違わない
同じのが溜まっていて
小さな穴から
ちょっとづつ出ていった
パンドラの箱の中みたいに
開けた張本人の手のひら
何かが残るなら
それはゴムだけ
世界と同じモノを持たされていて
違うモノを持っている気がしない
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降り注ぐ重力は常に平等
それは同じ地平線の上
立つ事を望めばの話
それでも
君たちの足取りは
風船みたく軽く
ときどき
私のポンコツは
鉛以上に重い
羨ましく思う
それでも身体を今日はどこへ
運んで行ってしまおうか?
山の頂きを目指そう
それとも海底深くへ
いつでも削ぎ替えの効く
便利な人間ではない
鉄やプラスチックやゴムに
犯され続ける足だが
手を引かれて歩きだす事はない
彼にもプライドがあるらしい