詩人:凪都 | [投票][編集] |
殻に
小さな穴を空けて
卵の
白身だけ
抉りだして
黄身だけ残して
黄身だけ残して
揺り籠に浮かべれば
君が声を上げるのだと
神様が言ったから
マッチを一本
擦ってみた
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白に浮かんだ黒い世界から
一粒二粒透明を零す頃
大地にしみ込み
土に薄い影を作る
向かい風にもかかわらず
留まっていた歩が
進みだしたら
足の裏に隠した雫を
そのまま踏み躙り
次は上の空で歌を唄う
弧を描くだけの口の奥
今日から少しづつ
牙を磨き始めよう
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音符を紡ぎだす唇
陽気に軽快にテンポよく
青すぎる空の下で
あの女の子は
花が笑っていると言う
草がささやいていると言う
早鐘を打つ心より早く
駆け出す体に追い打ちの南風
ヒラヒラはためく
朱色のスカートの
眩しいことと言ったら
一つにまとめた長い黒髪を
ゴムで縛り付けておくのも
ためらうほどの空模様の下
あの子は草原の海を
掻き分け走っていく
手のひらより
小さくならぬよう
こっちも頼むよ南風
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後ろからの南風に笑みを零す君なら
不意打ちの
真正面からの北風に訝しがるだろう
みんな曲者さ
四方八方へ
こんにちわとさよならを
誰もが携えて歩く
上空に渦巻く嵐
足元の草達の
夢の邪魔はしないつもり
だから今は誰も
君を撫でやしない
擦り抜けていくのが
一番風らしいはず
捕まえないでいてよ
空にかざした右拳の中
開けたってカラっぽな事
何かを信じているらしい
君も、君さえ
擦り抜けていく旅人は
草を踏み付けて歩く事を
良くは考えていない
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裸足で駆け出す子供
鳥目をこすって
マンホールを故意に踏む
星だけが見える晩の空
映す噴水の中にでも
月は沈んでしまった?
片足幅の赤レンガを
踏み外さず歩くから
明日は少しだけ
顔を見せて
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真っ白なノートの上
走らせるペンがない
足元には汚れたシューズ
指先に力を込めて
絞り捻り出す景色
いつか見た概念を
見に行くためだけなら
これ以上靴は汚れない
電話だけ待たせて
消しゴム片手に
行ってしまえ
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そこまで回らない頭が
結果的に【優しい人】の
レッテルを手に入れた
胸に堂々と
張れたもんじゃないが
しかし棄てられず
緩んだ涙腺を無視して
こっそり懐へ
しまい込んでいた
さよならと
はにかんで
手を振る一瞬に
ちらつく足元の
伸びた黒さえ
靴裏に潜んだ
闇で染まる頃
傾いた太陽は
今日も暴けず
不貞腐れて行った
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揺れる木の葉の
囁きに僕はフラフラと
腰を預けた大木は
逃げようとはしない
木漏れ日に濡れた身体
遠くの入道雲を見つめる
陽だまりの夢を見たい
鈍くなる瞬きで
誰かにお願いした
傍らの草が重なり笑う
誰に向けてなのか
関心が向く前に
目蓋の裏から
掻き出した空想
風に髪を撫でられても
もう
指一本動かせない。
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日溜まり停滞地にて
昼寝で過ごす夏至の日
屋根に転がる黒
鍵尻尾を丸めた黒
耳に穴があるが
私のお洒落じゃない
けれどオッドアイは
何よりの自慢なの
裸足で駆け出して
思い出したように
たまに振り返り
首を傾げる黒
瓦から瓦へ
下を見ても
今はいない
今はもういない
名前だったらしい
誰もが呟いた
あれが
名前だったらしい