詩人:鰐句 蘭丸 | [投票][編集] |
小学5年生の頃引っ越した先の小学校の同じクラスの女の子の夢を見た
正しくはその女の子の現在の彼女と出会う夢だった
最後に会ったのは26年前だが
その頃はお互い22、3歳
彼女は東京で劇団に在籍して役を獲得しては各地の公演に出演していた。
一度だけ彼女の出演する舞台を観た
ショックだった
舞台の上の彼女は輝いて
目に目蓋に脳裏に焼きついて
何年も俺の中に住んでいた
俺と彼女は付き合ってる訳ではなく
文通相手だった
わずか一年ほどしか居なかった小学校の同級生だった彼女はいわゆる優等生
勉強もできて運動もそつなくこなし
副学級委員長だった
たった1年間だけ同級生だった俺に転校してきてまた転校していった先の俺にクラスを取りまとめて手紙をよこしてくれた
正直、転校生の俺は虐めの的だった。
生徒からも先生からもその頃子供なりに世の中ってなんて酷いんだ、怨んでやる…
なんにも出来なかったけど、その頃の悔しさは大人になるにつれの強さ根性みたいのに変わっていった
クラスのみんなが手紙くれたのはそれきりだったが、彼女は進んで俺を文通相手に選んでくれた。
あからさまに慰めみたいな同情のようなものだとも思いながら
お互い成人するまで文通は途切れながらも続いた
俺は叶わないと思いながら彼女に恋していた
無様な劣等生の無様な文通相手への恋
26年前、東京に住む彼女に一度だけ会った
劇団の事務所が入っているビルのエレベーター前で
ほんの数分今では覚えてもいない
そんな事 おしゃべりとも言えない会話をして
彼女は忙しそうにエレベーターで事務所へ消えていった
そのひとコマを写真に収めた
今もアルバムに綴じてるはずだ
夢にもどるが
相変わらず可愛げのある優しい顔立ち
少しやつれていた
俺の夢の中の彼女は重い病気を患っていた
歳の離れた年配の男性 彼女の夫なのか
別れ際 その男性から彼女の生命が永くないことを聞いた
別れの言葉を交わして背中を向けて歩いて行く彼女は泣いていた
俺は夢の中
彼女を求めてさまよった
彼女には夫があるのに
さまよっている最中に目が覚めた
Facebookで彼女を探した
元気そうだった
それでよかった
よかった