夜が明けるときは、生きているものの音がする。私は、手すりの外から、旅立つ君を見ていた。どこか淋しげにみえた。それはきっと、私と君が共感しえぬ岐路で存在しているからだろう。旅立ちは孤独である。君には覚悟と信念とがあるだけで、あとのすべては航路を妨げる荷のようであった。私も、君への余計な荷であるから。今からずっと何も語れないそのことを私は認めた。
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