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ハトの部屋


[19] 種の中の胚
詩人:ハト [投票][編集]

わたくしは
雇われる者であります

そうして日々生き延び
食い繋ぐ者であります

今時賃金手渡しの
そんな職場でありますが

昼休みもなく
雑務の多い仕事でありますが

好んで選んだ仕事であります

大人になどなれなくていいと
望んだ日々は遥か遠く

今はただ
未来の種を育てている
そんなわたくしであります

この種たちがこの先
より良い土に
より良い水に
より良い光にめぐりあい
立派に伸びて行けるよう

その胚のなかに少しでも
土に落ちる力を
水を取り込む力を
光を吸い込む力を
少しでも、少しでも

わたくしは
雇われる者であります

土でも
水でも
光でもございませんが

未来の種を
預かる者であります

時に間違い
時に叱られ
迷うこともございますが

好んで選んだ仕事であります

わたくしは
雇われる者であります

そうして日々生き延び
食い繋ぐ者であります

今時賃金手渡しの
そんな職場でありますが

昼休みもなく
雑務の多い仕事でありますが

好んで選んだ仕事であります

わたくしは
雇われる者であります

2006/07/23 (Sun)

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