詩人:詩奈 | [投票][編集] |
一人歩くいつもの道は
妙に切なくて
まるで目の前にいるみたいに
彼の握る手の強さが
彼の香水と本当は嫌いな煙草の苦さが混ざった匂いが
彼の目が鼻が口がどんなかが
全てはっきりと思い出せるのに
今私はただ一人で
どうしようもなく
愛おしくて
この切なくて苦しくて
だけど出てくる涙の熱さを
どう言葉にしたらいいかわからない
一人歩くいつもの道は
妙に切なくて
ただ私は子供みたいに
彼に抱きしめて
笑いかけてほしいだけ
それだけなんだと思う
詩人:詩奈 | [投票][編集] |
どうして人は
「いつも」と違う状況にならないと
そのありがたさがわからないのだろう
どうして人は
強く願っていたことも
時とともに
忘れてしまうのだろう
どうして人は
いつの間にか慣れ
疲れてしまうのだろう
どうして人は
些細なことで急に
あたたかな気持ちになれるのだろう
どうして人は
無性に誰かが恋しくなる時があるのだろう
どうして人は………
.
詩人:詩奈 | [投票][編集] |
人との楽な付き合い方をするには
いかに自身を「変」と思わせるかである
自分を殺し
皆の笑いを誘う
馬鹿なふりをすると
深い話などはしない
かるい関係で良い距離を保てるのである
素を見せたら最後なのだ
一歩離れたところから
自身を客観視することが重要となる
つまり私にとって
「変」と言われることは
楽な関係の成立を意味するのである
.
詩人:詩奈 | [投票][編集] |
帰り道
自転車で見上げる空の星は
なんだか
感傷に浸りたくなるのです
例えば
早過ぎる時の流れと
それと共に
多くを失った感覚
星に手を伸ばしたけれど
届くはずもなく
掴めるはずもなく
ただ空をきるのです
冷えた空気は
この先の未来を
教えてなどくれません
わたしは
どこへ行きたいのか
風に揺られた木は
冷たくざわめくだけ
気付けば自転車も
タイヤの空気は
ゆるんでいました
いつからかしらと
タイヤを触れば
手がかじかみ
力は入らないのでした
帰り道
自転車を押しながら
見上げる空の星は
なんだか感傷に
浸りたくなるのです
.
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泣いてるの
十一月の空に
さみしいよ
誰ともわかりあえないの
埋めてよ
何だっていいの
お願い
この
どうしようもない孤独を
壊してよ
ねぇあたしは一人なの?
独りなの?
ねぇ
ねぇ…
答えてよ
.
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色づいた木の葉が
ちょうど
自転車のかごに
落ちるような
珍しい、でも些細な
そんな偶然を
喜べる人でありたい、
そんな偶然を
奇跡だと
信じてやまない人で
ありたい、
そう思うのです
.
詩人:詩奈 | [投票][編集] |
銀杏が色づいた並木道は
永遠を思わせて
どこにだってあるような風景なのだけど
どこかが微妙に違っていて
束縛に似た支配を
自由だと信じきっていた昔の私が
なんだか懐かしかった
思い出は夢と似ている
ぼんやり霞んでいく記憶を惜しいと思うのはやめにした
消えそうになっても
確かなものだったことに違いないのだから
枯れない銀杏があるなら
私の夢の中にだけ
そういうもの
そういうものなのだと思う
.
詩人:詩奈 | [投票][編集] |
そういつも言えなくて
喉まできてるのに言えなくて
なんだか一人
切なくなるの
言葉にしなきゃ伝わらない
なのにどうして
代わりに手を握るしか
できないの
言えなくて切なくて
あなたは優しく笑って
あたしの髪を撫で
強く手を握り返してくれる
あたしは時間差で
帰りの電車の中
あなたにめーるするの
「好き」
.
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夜中目が覚めると
つけっぱなしの暖房が
喉をカラカラにしていた
息苦しくて開けた窓からは
冬のにおい
耳をすませても
何も聞こえない夜の世界で
一瞬だけ
プラネタリウムにでも来たような錯覚
誰も知らないものを
誰も見えないものを
感じた気がして
子供の頃
秘密基地を作ったドキドキが
よみがえる
冬の夜が
ふと目が覚めた時の冬の夜が
私は好きだ
詩人:詩奈 | [投票][編集] |
スケジュール帳全ての月に
油性マジックで大きくバツを書いてやりたくなった
誰も信じない許さないと決めながら
私は誰かを待っている
踏み込まないでと言いながら
試している
矛盾。
散らかったままの部屋は
私の中身だ
良ければ一緒に
片付けてくれませんか
くれませんか
最近よく泣くのはたぶん
疲れてるからだ
たぶん
たぶんね
一度スケジュール帳を捨てようか
明日と今日と昨日と区別がなくなるように
起きてからのことは
起きてから考える
そういう生き方は
世間的によろしくないですか
どうですか