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千波 一也の部屋  〜 投稿順表示 〜


[789] グレープフルーツ
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グレープフルーツ、を啜ると

ゆびさきやら舌先やら

なぜだかきみを、

おもいだして


グレープフルーツ、か

それとも、ぼく、か

においのあふれる

部屋になる


なまなましい

いたずらみたいに


 皮、をしめらせ

 たね、をおとして

 果汁にさまよう

 皿のうえ


 ナイフの光沢は

 吐息にくすんでしまうから

 爽やかなつもり、は

 いつまでも青年を

 たしなめる


フレッシュに、

唾液にまみれても

もぎたて、の顔立ち、の

ような


 たぶん、

 行けるところまでが真夏


グレープフルーツ、が

こぼれる、ように

こぼれる果実の

さなかで

おもう


ぼくは

いくつを食べたかな


微笑むきみのうちがわで


2007/03/27 (Tue)

[790] 朝露
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風のゆくえに

はぐれたのなら

含ませ過ぎた胸に手を


どうでもいいと言い捨てるには

あまりに一途な

朝です、

誰も


いつの日も


 気がつくためには

 やわらかく、


 ひかりをあまして

 散りゆきそうに、


 そこで、

 はじめて、

 生まれるはずです、


 かわらない名も

 無数の風も


乗り継ぐ支度を整えるまで

ゆっくり夢は待ちません


つづき、と口にするなぞりを

やさしく乗せて

流れゆきます、

横顔たちは


 自然のちからが砕くかたちを

 置くだけで、いいのです


 ねむりを終える

 その間際でも



うつくしい欠片に

傷つき慣れているのなら


探さず、

探して、


残りのまま、に



2007/03/28 (Wed)

[791] 四月迎え
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掛け違えた光だとしても

あふれかえることに

消えてはゆけない

肩だから



 底に、四月はいつもある



泥をかきわけて

そのなかを親しむような


見上げることの

はじまりに

どこか、

なにかの

沈みを

おぼえるような



 空が、

 抱きとめるものすべてを

 わからないまま


 ぬくもりは、不可思議



染まりゆくときを

繰りかえしても

知らずには終われない

素顔なら


待つも待たぬも

春の色


それは

途方もなく

やさしく続く



2007/04/14 (Sat)

[792] 朧月夜
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水の匂いが燃えてゆく



漆黒は

うるおいのいろ


こぼれてはじまる

灯りにけむる、

波のいろ




疎遠になれない花の名に

ひれ伏すともなく

かしづく儀礼は、


いつかの川上


衣擦れを漕ぐ

ささやきの






面影がむすばれてゆく


一途に揺らぐ炎となって

重なることを

こいながら


涙、


線を越え

またひとつ

懐かしくなる



2007/04/16 (Mon)

[793] 少し妬けた
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むずかしい顔をしていても

だれかに名前を

許すとき

見えない風に

腕だけ乗せる、ような

わたしはひとつの窓になる



だれかの背中のさびしさに

おもわず声を

かけるとき

揺られる髪の、

あらゆる自由の立ち位置の

ふしぎな狭さと

わたしは

向かう



探さなければならない


嘘をはたらく

そのからくりの為、

たくさんのほんとうを

きっかけにして


ねじれなければならない


愚かさに

まっすぐに

気がついてしまわぬように



ときを

わたり歩いてゆくことの不平等

そんなおおきな空の真下で、

和平は守られ

わらい合う



届かない、ということの

ひとつの幸福をわたしは溺れ

継がれる習いそのものに

くちびるを噛む

少しだけ


めまいのさなか、

ひかりを浴びて

たしかに

浴びて

2007/04/18 (Wed)

[794] よくある話
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傘のしたでだけ

降り続ける雨がある


 強弱では語り得ない、それ



交差点を渡る黒たちの

はじまりの日は

白だった

或いは

今も


 嘘とほんとを

 分けたがるけれど、みな



太陽をもとめることと

雨雲を祈ることとは

等しくないから

まったく同じ


 知らぬまに無理を働いて

 こころは眠る

 それぞれの

 夜、に



(聞こえるものが

(多すぎるということ

(見ることは

(たやすくないということ

(話したそばから

(縛られてゆくということ



自由を知らないことで

いのちは

ことばと

むすばれる




夢のなかでだけ

傷つき止まない国がある


 難しく

 かわしたつもり、の

 夕陽の数だけ


 よくある話の片隅で


2007/04/22 (Sun)

[795] はぐれ水
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もう

どこにも帰れない


そんな気がした夕暮れは

どんなことばも

風にした



 ながれる雲の

 行き先はしらない


 突きとめずにおくことが

 しあわせだとは

 かぎらない


 揺られる髪は音もなく

 より添うでもなく

 離れるでもなく



透けてゆくものに

残されること


それが、時刻




ほんとも嘘も

燃えるようにして

かばい合い、

奪い合い


それゆえに、水

それすらも

水にして




たとえば明日が右手なら

左の手には

温もりを置き


かなしみの日を

輝くために


両の岸から



2007/04/27 (Fri)

[796] 浮島
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さかずきが、

まわる



 ひとづてに咲く

 ゆめまぼろし

 を
 

 裂いては遠のく

 かなしげな、

 さめ



ゆびさきに乗る

花びらが、

よる


わからぬままの方角は

なおうつくしく

影を研ぎ



 ふれる、かぜ


 かおる、

 とき


 かりそめの陽に

 華やいで
 

 いたみ、

 まどろみ、

 かんむりは、つゆ、


 いつの波にも

 牙、こぼれ
 
 

声は

向かう


いさぎよき、

かなたのためだけに


おぼえておけない

微笑みで


2007/05/15 (Tue)

[797] 最後の雪
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最後に降った

雪の日のことを

思い出そうとして

思い出せなくて


そこからようやく

なつかしさが

訪れました



うしなったわけではなく

戻りたいわけでもない


いつだって

五感のきまぐれに

寄り添いながら

いるのです



 ひとつ前なら風のなか

 みっつ前なら

 夜のくに
 
 いつつ前なら扉の向こう

 数え足りずに

 陽をよみがえり



ほんとうの明日を

どこで待ちましょうか


昨日を

たやすく

捨てることなく


いつわりの名に

おびえ

ためらい

祈りをこめて



 きれいな

 きれいな呼び声は

 はるか無限のさびしさに

 似ています



さすらう時を

うなずくひとに

差しのべる手は

えいえんの




すぐにも消えて

そのまま生まれて

誰かの最後と

なりながら

また


2007/05/15 (Tue)

[798] 生まれてみたい
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生まれて

しまった後ならば、

二度と

生まれて

いけないだろうかと、

ひとりごとだけ

生んでみる



いくつになっても

守られるから、

さびしさは

無くならない


幼なじみは

そんな厳しさ


寄り添うほどに

なにかが

欠けて



いつだって、

単純な

複雑さを

さまよっていて


もしかしたら

毎日が

生まれたて、


たやすくないけれど

そうであって

欲しいから


もどかしく、

ゆたかな

はざま



転がっている



生まれて

みたい、こどもたち


抱えているのは

かなわない

笑み


2007/05/28 (Mon)
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