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千波 一也の部屋  〜 投稿順表示 〜


[1083] ほほえみ くすり
詩人:千波 一也 [投票][編集]


あえる ね

お、 と、

あ ふれる ね


はるか な はる が ね

くる ね のにね の に ね

あ ふれる ね

ほほ ほほ うふふ



ひのな ひの なか

ひかりの お く ち

くすり くすくす

ぐっすり ね むれる

ねむれる あめ つち

す、

が、

お、

おっとと おっぽ

しゅしゅぽぽ しっぽ



あえる ね あう ね

いえる ね ゆう ね

すやすや す や

すむ ね 

すむ ねこ 

あの ね の ね



わらわ わらわら

まるかけ まるかけ

かけない ように

え、

ん、

で、

おてて あわ てて

お て て

つれて ね

ね むろ



はは は はは

すく すく くすり

くす くす

ひ か り


2011/09/17 (Sat)

[1084] 逃げ道を照らせ
詩人:千波 一也 [投票][編集]


工事ランプは今夜も寂しくて

車もまばらな夜の向こうには

灯るような、三日月


いまとなってはどんな言葉も

傷をかばうための

道具でしかないのなら

せめて

こまめに

踏むしかない

ブレーキを、

ブレーキという

狭さを



 おのれの強さを守る理由は

 総じて弱く

 おのれの弱さを守る理由は

 総じて

 強い



どんな明かりで照らしても

背中の荷物は影を落とさないから

すべての寂しさよ

細々と

灯れ



 赤く

 ブレーキランプの断続が

 ミラー越しに

 遠ざかる



この目に映る遠くまで

夜はまっすぐ伸びていて

境目のなす意味は、もう

ひとつも残らない


誰のためでもなく

なにかのためでもなく

ほんのわずかな自由さと

それを育てる不自由さとが

尊い巨塔をなして

ゆく


監視のための、

うつくしい

巨塔




夜よ、灯れ

絶えずに灯れ


小さきものの

迷いや憂いや誇りの頭上から

はるか、

逃げ道を

照らせ


最後の

最後の

すくいのように

ただまっすぐに

照らせ



2011/09/17 (Sat)

[1085] ガラス戦争
詩人:千波 一也 [投票][編集]


宇宙のかなたの秘めごとに

聞き耳を立ててみたくなるような

わたしの夜は


透きとおるほどに汚れてしまう

汚れるほどにもろさを甘受する

もろくなるほどに

他を傷つける



 聞きたいことは

 はじめから決まっていて

 裏を返せば

 なにも

 聞いてこなかった、ということ


 割る音も

 砕く音も

 磨く音も



宇宙のかなたには

可能性があるらしい


優しくなれる可能性

勇ましくなれる可能性

想いが報われる可能性



 大なり小なり

 望遠鏡は

 大なり小なり

 かなたを

 知る


 それゆえ争いは仕方ない

 みち半ばなら

 仕方ない



片隅にちがいない

わたしの夜は

誰より平和で

わたしの夜は

誰より

危うい


から、


みがかれても

みがかれても

此処にいる


なすすべもなく

武装して





2011/09/17 (Sat)

[1086] 愛の位
詩人:千波 一也 [投票][編集]


くもらぬ声で

ささやく物語が、愛


結末は

かなしくても

信じるしかなかった

瞬きの間が、愛


傷んだものは

そのままにしておくことが、愛

差しのべる手も、愛


叫ぼうとして

踏みとどまった後悔が、愛


伝わらなくて

にぎりしめた川風が、愛


星の名を

おぼえようとする瞳が、愛

星を見ていない

その目も、




雨上がりの虹を架けるものが、愛

消し去るものも、愛




 一から獣へ

 獣から策へ


 策から縁へ

 縁から万へ




指おり

数えることの

よろこびが、



数えたところで

無に帰る水面も、愛


ひとの光の

やわらかさが、愛

目をつむりたくなる

まぶしさも、愛


引き継がれてゆく

お荷物が、愛


失うことの

おそろしさが、愛


涙の奥の

なみおとが、愛

それを

描いたり

描ききれなかったりする

指さきも、愛


いつの日にか

が、愛


いつのまにか

も、






2011/09/17 (Sat)

[1087] 恋文
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あなたに

似合う季節は

どれとは言いがたいので

あなたへおくる言葉はすべて

どうやらいまも

なりゆき

です


 探しものは箱の中

 箱という名に閉じこめられた

 とても、やわらかな

 形



顔なじみの風景が

ようやく広くなりましたので

淡い言葉もわるくない、と

思える紙片が

わたしです


きのうとあしたの

まんなかあたりで

よくわからずに

安堵して


 すがるべきではないものを

 ときに鍵と呼ぶ


 日々のすべてが

 かけがえのないものならば

 どんな痛みも

 どんな眠りも

 どんな翳りも

 どんな恨みも



はたから見れば

わたしもあなたも

思うほどには

意味をなさない

物語です


とがらぬ言葉で

角のない言葉で

互いの輪郭のなさを

あらわに記しあって


そろそろ、

祝福しませんか

機をのがさぬことは

大事な大事なつとめですから




ぴたり、と

揃いませんか


2011/09/30 (Fri)

[1088] 流星たちの夜
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あふれる涙に

区切りをつけて

流星たちは夜を曳く


きらきらと

こぼれ落ちずに

音も立てずに

空は、昔



夜風をながれる

木の葉のさわぎが

飛べない鳥を震わせる


重なる波の片隅の

翼に空を仰がせる



苦しまぎれの偽りは

静かに燃えて


契りの鱗は、夜の底

まもられたかった意味たちの

気泡とともに

とけていく



約束は

彩られたら、終わり


ことばを撒いて

つかの間の迎撃に

無声は垂れて

夜は分かれて



懐かしい海の濃紺が

持ち合わせるのは

鏡だけ


流星たちの

素顔がいつでも

のぞめるように



2011/09/30 (Fri)

[1089] たまゆら
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ろうそくの寿命を

保たせたいのなら

使わないこと

点けても

すぐ消すこと


大事に

大事に

しているうちに

なくしてしまう

こともある

けれど



(おまえは

(どんな生き方を

(したいんだい



たばこの先に

火を点けながら

煙にもくもく

逃げられて


わたしは

わたしの

末路に

ついて

星々に

問う



2011/09/30 (Fri)

[1090] 夜明け前
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思い返せば、
みじかい言葉でした

苛立ちも
かげぐちも
願いでさえも

今となっては
レンズのない顕微鏡のような

役立たない、とは
言わないけれど

言えないけれど

もう少しだけ
毛布にくるまれていたい、とだけ
本音をぽつり



慣れた手つきで
開きかけたカーテンを
放置してしまいましょう

やめたところで
だれも困らないなら
すてき過ぎて
泣けてきます

振り返ることは、もう
終わりにしましょう



だれかに
聞いてもらえるような
願いではありませんでした

聞いてもらいたかったのか、と
問われたら
返事ははっきりしませんが

たぶん、
大切にする方法が
間違っていたのでしょう

月日がゆけば
忘れてしまいそうですが



得てして
すききらいは
上手な光り方でした

感応は自由で
明滅も自由で

なにがわたしの
素地だったのか、
知らないなら知らないで
良いのだと思います



ながい沈黙の
夢は続いてゆくのでしょう

これまでのように
美しさや
優しさや
やわらかさなどの
定義におびえて

答をそっと
拒むのでしょう

是非は
よくわからないから

ほどほどの饒舌さで
ほどほどの
寡黙さで



もうじき
夜が明けてゆきます

待つでもなく
避けるでもなく
途方もないものが
もうじき満ちてゆきます

だからわたしは
準備に余念がないのです

せっせせっせと、
ひとつでも多くの
忘れ物をするために

あちらこちらの
寂しさ悔しさ虚しさが
今夜もわたしに
帰れるように


2011/09/30 (Fri)

[1091] 夜を告げる舟
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月のかげから

漕ぎ出でるのは

夜を告げる舟


一隻の

心許ない

ささやかな舟



涙も吐息も

櫂にほどけて銀の波


愛想も美辞も

帆にいだかれて金の風




嗚呼

帰ってゆくんだね

なんにも傷つけないで

傷つかないで

さみしい薄明かりだね

きれいだね




彼方を愛した

言葉のかげから

漕ぎ出でるのは一隻の舟


きらきらと

名残惜しそうに

夜を告げる舟




2011/09/30 (Fri)

[1092] お片づけ
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きみが
見送りつづけたあのバスを
撮ることなんて出来なかったけど

きみが待ちつづけた
あのバス停とベンチとを
ぼくは撮ったよ

現像なんかしないけど
捨てたりもしないけど



窓の外には枯葉がつもって
もうそんな季節で

きみは
迎え入れがたい時間が
増えた、というから
ぼくは秒針の音を聞いている



泣き方に
手ほどきなんて要らないけれど
細々灯れるものならば
教えを請うのも
わるくない

そう言ったきりきみは
空の無言を聞いている



守れなかったことの寂しさが
悔しさを呼ぶ

守れなかったことの悔しさが
寂しさを深くする

なにを守れなかったのか
それはきれいに忘れても



履き古した靴のいったいどこが
いとおしいのだろうね

指になじむ紐の擦り切れ具合かな
無難に選んだ彩りの
褪せ具合かな

どこの物かもわからない
あちらこちらのかかとの汚れかな



さよならを告げる
練習をしていたんだ

思い通りにいかない夕暮れは
そんな小さな焚き火に興じた
くべる言葉の少なさに
身を震わせながら



きみからの手紙は
行間を読むことにしている

語らないきみの
呼吸にじっとおもいを馳せて



思い出さないほうがいいことなんて
一つもない

わかりきってるからこそ
苦しいんだ
こんなに



青さはちっとも
変わってなくて
敢えて言うなら
変わってしまったのは
ぼくのほう

とても難しくて
とても易しいことなんだけどさ



得たものよりも
のこりのほうが気になって

ぼくはずいぶん
待たされている



かなしい言葉はいらない
それを頼らなくても
十分にかなしめるから
よろこびも
同じ




捨てるという所作や言葉は
あまりに冷徹だから
決まりごと
そう呼ぶように
ぼくは心がけている

誰かにとっては
散らかったありさまに映るとしても
なんとなく

2011/09/30 (Fri)
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