詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
彼の名はナニカ
ナニカ チョウダイ と言われても
どうしたら良いのか わからない
タロウ チョウダイ
ハナコ チョウダイ
きみなら どうする
▽
ソレガ ナニカ は
格好いい言い回し
出来る男 それが、ナニカ!
頼れる男 それが、ナニカ!
人情の男 それが、ナニカ!
ソレガ ナニカ の あとに
疑問符はいらない
文法上の誤りは ないけどね
▽
ナニカ トリツカレテル と言われて
ナニカ は 焦った
お祓いもした
ナニカ モノタリナイ と言われて
ナニカ は 頑張った
ナニカ を 向上させるべく
頑張った
ナニカ ノミモノヲ と聞くたびに
ナニカ は すっと席を立つ
すると通りすがりのウェイターが
お客さま、ナニカ?
と 呼び捨てにする
▽
ナニカ ガ イル と叫ばれた夜
ナニカ は 泣いた
ナニカ ガ マチガッテイル
(いいえ、ぼくはなにも
ナニカ ガ オチタ
(いいえ、ぼくはどこにも
ナニカ ガ オカシイ
(いいえ、ぼくはいつだって
ナニカ カワイソウダネ と 誰かが言ったとき
ナニカ は そこに もう いなかった
▽
ナニカ クオウゼ
ナニカ クイタイナー
ナニカ クエバヨカッタ
声の背後で
にげる足音が した
▽
川近くの堤防で
階段なんかに腰かけて 遠くを見ていたら
ナニカ カンガエゴト デスカ って
おばあちゃん
お孫さんつれて
何にも答えずに 黙っていたら
夕日がきれいで
ナニカ イイコト アリソウネ って
おばあちゃん
お孫さんも
笑顔で
だから
ぼくは くしゃくしゃに笑って
泣いてることを ごまかした
ナニカ コマッタラ マタ オイデ
ワタシハ マイニチ ココニ クルカラ
うん
ありがとう また来るね って
ぼくは くしゃくしゃに 帰った
ナニカ スクワレタ
▽
彼の名は ナニカ
時々姿を見かけるけれど
ナニカ 元気そう
それでも
ナニカ 傷つくことがありそうな
ナニカ ふしぎな顔してる