月のかげから漕ぎ出でるのは夜を告げる舟一隻の心許ないささやかな舟涙も吐息も櫂にほどけて銀の波愛想も美辞も帆にいだかれて金の風嗚呼帰ってゆくんだねなんにも傷つけないで傷つかないでさみしい薄明かりだねきれいだね彼方を愛した言葉のかげから漕ぎ出でるのは一隻の舟きらきらと名残惜しそうに夜を告げる舟
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