今夜の雨はいつもより遠い気がしたのですたぶんわたしが降っていたのでしょうだれにも干渉されまいと狭いわたしがいたのでしょう他人はそれをときどき憐れみますかつてはわたしも何度か憐れみましたお互いさまとはこういうことなのですね合うも合わぬもいっときの一滴、なのですねならば明日の雨を思案したところで不毛というものですせめてものお行儀よさでわたしは今夜を暮らしましょう逃げつ逃がしつ夢でも語りましょう
[前頁] [千波 一也の部屋] [次頁]