詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
わたしの指が
風にふれる、と
ふたたびページが
繰られます
偶然に
呼び起こされるまで
目ざめることの
なかった物語
でも、
待つことを
つづけてくれた
約束たちに
わたしは
せめて
大人びて
ちいさく
ちいさく
恥じらうのです
あなたの瞳が
遠すぎるなにかを
探さなくても
すむように
ありったけの
言い訳を含んで
わたしは
こぼれる、
のです
雨も
陽射しも
味方しないけれど
敵対もしない
ならば、
平和に
まどろむ方法は
あまりに
たやすいと
思います
だから、
きっと、
終わってゆくことが
できますね
わたしたち
終わらせる、
のではなくて
美しい習わしとして
終わってゆくことが
できますね
わたしたち
あなたの指が
波にゆれる、と
ふたたびページは
とまります
気まぐれめいた
流星たちのように
あらたな呼吸が
古いことばを
呼ぶのです
なにものにも
渡らない
約束が、
また
生まれて
ゆくのです
細いところから
細いところへ
やさしい囲いの
記憶に乗って
かぎりの空も
かぎりの
海も
ひとの時計に
添うのです