詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
あなたが
愛してくれるのは
祈りだけにあかるい
ささやかな
ともしび
星には
なれない歌たちの
ひたむきな揺らめきを
あなたはそっと
抱きとめる
冬の香りが
ゆびの先まで
染みついたから
雪の支度はととのっている
言葉のなかの
静けさにふと歩みを停めて
わたしは星の涙を見上げる
繋がろうとする
川音を聴く
施しようのない石くれが
ゆっくりゆっくりと
胸のなかをめぐる
それは
だれにも
触れられない
ちぎりの息吹
だれの目にも映らない方角へ
わたしたちは傾いてゆく
まもりが
証してくれるのは
ひかりの先とその背中
海が
やさしく富むように
かなたは円く
見渡せない
隣り合う者の
ひとみを受け取ることだけを
唯一かなえて
安らいで
もうじき
雪が降りてきたなら
わたしはあなたを
また見失う
円く
しずくが
寄りあつまって
個々の時計を
狂わせる
なだらかな鋭角の
微笑のなかで
限りのある熱を
まよいのない物語を
告げ終えるまで
ずっと
きっと
そばに
計り知れないものになど
なれなくていい
透けて
すべては
ひとつになるから