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千波 一也の部屋


[1248] ゆりかご
詩人:千波 一也 [投票][編集]

この手が
届かずにおわった物事ほど
忘れがたいのは
なぜだろう

それゆえか
届いたつもりの物事さえも
本当は
届いてなど
いなかったのではないか、と
思えてしまう

本当、の
意味するところを
解せないまま
夢の
歩道の
険しくなるさまに
ふと
立ち止まり



日々を吹きわたる風は
敵ではないし
味方でも
ない

たとえば
このからだが
眠りを必要とするように
自然な
起点の方角へ
風は
月日を
吹きわたるもの

そうして夢は
はざまに
灯る

始まりも
終わりも
知れず
夢は
はざまに
灯る



守ることと
守られることとの
違いはなんだろうか

ゆりかごを
揺らすものにも
ゆりかごは
必ず
あって
そのゆりかごを揺らすものにも
いつくしみは
必ず
あって



 見あげた空の
 もっと向こうに
 夢を
 託すとき
 見えないすべて
 届かないすべては
 よりいっそう
 美しくなる

 思いの
 みちすじは
 めぐりめぐって
 遠くもあるし
 近くもあると
 ときどき
 気がつく



誤ることは
いのちの務めで
それを
正すところから
あらたな誤りは生まれ
いのちは
続く

だとすれば
己のなし得ることは
まだまだあるから
伝えていよう
未熟な
熱を


やすらぐことも
危ういことも
だれかの
夢の
ゆりかごに
なる




2014/03/02 (Sun)

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