詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
言いたい放題
言われてしまった
でも、
自分はたしかに大した器じゃない
けれど、
大した関わりもない人が
たぶんに狭い了見で
よくもまあ
あんなに細々
あんなに執拗に
言えたものだ、と
いささか気分が悪かった
とはいえ、
自分の知らない世界のことは
好き勝手に語れるものだし
とやかく言いたくなるのも
わかる気がするし
自分も
どこかで
同じような言葉を
ばらまいていた可能性だってある
だから、
深く考えるのは止そうと思って
その場はとりあえず抑えてた
それから、
おまえの家で飲み直し
自分と同じくらい言われてしまった
おまえの家で飲み直し
おまえはおまえのことよりも
わたしのことで怒っていたね
わたしのことを知らない奴らが
「なんであんなことを言うんだ」って
怒っていたね
いつか、
おまえもわたしもいい歳になったなら
きっと何かしらの示唆を与えるつもりで
偉そうなことを誰かに言ってしまうかも知れない
それはそれで必要なことだとは思うけれど
今日みたいにさ
理不尽な思いをさ
させてしまうような大人にはならないことを
約束しよう
おまえと飲む酒がいつまで経っても
わたしを未熟に酔わせるものであるように、と
わたしは願うよ
いつまで経っても
やがて、
おまえもわたしも離ればなれになる日がくる
こういう商売だからね
仕方がないけれどね
でもさ
だからなおさら思うんだ
おまえはわたしの
戦友だ、って
ただ、
戦う、といっても
がむしゃらに無鉄砲なわけじゃない
信じるものに向かって突き進もうとすること
それが
おまえとわたしの戦いだから
おまえが汚れたら 汚れそうになったなら
容赦なくわたしは撃つ
おまえもわたしに
そうであれ
言いたい放題 言われてしまった
その悔しさが
なにゆえの経緯で生まれるのかで
人それぞれの道筋がわかるから
わたしは
おまえに会えて良かった
難しい時代
難しい土地柄なんて
見映えのいい口実はたくさんあるけれど
そんな賢さが
人間の長所だなんて哀しすぎるから
戦友よ
おまえとわたしで打破しよう
同じ思いがもう二度と
誰の胸にも染みないように