詩人:千波 一也 | [投票][得票][編集] |
この手には限りがあることを
渋々から卒業をして
潔く
承知出来るようになったんだ
五本の指は五本でひとつ
二本の腕は二本でひとつ
一生懸命になるのではなくて
一生懸命にならざるを得ないように
もともと僕は生まれていたのだったね
この手を こぼれるものも
この手を ころがるものも
この手を みかぎるものも
僕は震えずにその名を言えるよ
こっそりと、ほんのすこし
僕は
この手に触れたものには
温度を渡すことに決めたんだ
伝わっていないかも知れないし
今頃どこかで
冷え切っているかも知れない
でも、僕は
覚えておくことにしたから
こっそりと、ほんのすこし
温かくなれる
頬をくすぐって、風が近くで渦を巻く
「お前はここの河原が好きだったね」
椅子にふさわしいこの岩を
軽く
なでなで。