詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
遠くの丘の教会の厳かな鐘の音が届く
私は
如雨露(じょうろ)を止めて
目を閉じた
愛の門出のサインであろうか
永き眠りのサインであろうか
私がこの手に掴めるものなど
少しも無い
風の尻尾ですら
永遠に逃がすであろう私の目には
頷くような
花々の揺れ加減
如雨露が一度に いだける水には
限りがあって
如雨露が一度に そそげる水には
限りがあって
それでも
その一度を必要とする花々がある
二本の腕と、十の指
二本の脚と、十の指
数限りある私の身でも
慎ましく守り通せるものは
きっとあるのだと思う
遠くの丘の教会の厳かな鐘の音に
しずく
ひとつぶ
晴れ渡る空の青さが
また一つ
増した気分で
私は如雨露と再び歩いた