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千波 一也の部屋


[613] 少しだけ歩き疲れたら
詩人:千波 一也 [投票][編集]


ベンチに腰を下ろしたら

まるで恋人みたいな気分になって

不思議



人の通りの薄い時刻

けれども人がいない訳ではなくて


噴水を挟んだ向こうのベンチには

しっかりと

恋人たちが腰を下ろしているのだし

ついでに言うなら

お隣にも

しっかりと、ね




ぼくたちはキスをするし

どこに

どんなホクロがあるのかさえも

知っているのだけど

なんだろうね

恋人っていう想いをあらためて手にすると

くすぐったい心地がするね



言葉にはいのちが宿るという話

あれは

そんなに疑わしいものではないかも知れない



風向きひとつで

噴水の飛沫はこちらへ来るから

きみは

少し冷えたと言う

ぼくは

少しだけ素直に

その手を温めてあげたりした


もともと暑がりのぼくだから

そんなときは

丁度いいな、って

思うんだ

思うだけで

あんまり伝えないのが

ぼくの悪いところなのかも知れないけれど

そんなふうに思ったりもするんだ




風向きひとつで

噴水の飛沫は

あちらこちらへ

でも、

まんざらでもない様子だね




きみも優しい顔をしていることだし

もうしばらく

ここに

腰を下ろして

いようかな



ね。


2006/09/09 (Sat)

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