詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
日常にくたびれた玄関先で
茶色のサンダルが
ころり
九月の夜気がひんやりするのは
夏の温度を知っている証拠
おまえには随分と
汗を染み込ませてしまったね
サンダルの茶色が
少し、濃い
タバコが切れてしまったから
ちょっとそこまで行くのだけど
おまえも行くかい
濃いめの茶色は無言の返事
出番はまだか、と
サンダル
ころり
靴下よ、さらばだ
土足厳禁の我が愛車
おまえは靴置きケースに移される
運転座席の足元が定位置
うん、
とっても落ち着く距離感だ
夏との別れも
夏との出会いも
わかりやすい方法で
簡単に叶うものなのだね
いざ、タバコを求めて発進
こころに優しい煙のにおいを
いのいちばんに
嗅がせてあげよう
窓を開け放って
ぷかり、とひとつ
星空のした
気持ちがいいもんだ
ぷかり
ぷかり