詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
白鳥が飛来していた
初雪の予感漂う十月下旬
懐かしい湖面に
白鳥が飛来していた
渡りは
これから本格的になるのだろう
湖面には
ぽつりぽつりと
数えられるほどの小さな群れ
ひとあし早く訪ねてきた
雪の色の鳥
初雪まであと幾日
冬はすぐそこにいる
初雪まであと幾日
指折りした数を解いてゆけば
降るかも知れない
そんな気がした
吐く息の白さは束の間に消えてゆく
何も投影せずに
束の間に消えてゆく
胸の内は
うまく整理できただろうか
少なくとも
私が吐き出すものは
外気よりは温かいということ
それだけが事実
もう間もなく雪が降る
有無を言わさず総てを止める冬が来る
湖面の揺れも
あとわずか
舞い降りる冬の向こう側に
渡りの季節の
春がみえる