詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
雲ひとつなく秋晴れの空
父の運転で越えていた峠も
いまならば
自分の運転で越えられる
アクセルの踏み加減でスピードを調節
ブレーキなんか踏まない
でも
思いの外カーブは厳しいから
苦笑いで
ブレーキを踏む
雲ひとつない秋晴れの空は
限りが無さそうで
どこを見つめていれば良いのか
不安になってしまう
いつか空に手が届く
そう信じていた日々
伸ばした腕の指先は雲に触れる
そう信じていた日々
タバコの煙を逃がすために
開けていた窓の隙間から
冷たい風が入り始めたのは
午後三時
十月の夕刻は始まりが早い
西日の眩しさに
顔をしかめながら握るハンドルは
西行き
まだまだ旅の途中
太陽の光を街灯が受け継ぐ頃に
天高く
星々は光を放つだろう
雲ひとつない秋晴れに
天高く
星々は命を燃やすだろう