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千波 一也の部屋


[709] 水の瞳
詩人:千波 一也 [投票][編集]


まねごとはおやめなさい、と

たしなめられている


水の向こうにいる人に

あるいは

近くて遠い

水のおもてに

わたしのゆびは

冷ややかに染まる


月明かりは物言わず

それゆえ夜は

何もかもが許されるはずだと

たたずんで



わたしとよく似たあなた

触れられず

聴けもせず

わたしはまったく及ばない

けれど

一枚の水の隔たりに

あなたもわたしに及ばない


向かい合うことが

ひとみ


通い合う

まなざしにだけ

姿ははじめてあらわれてゆく



水は

わらっていただろうか

にげていただろうか


わたしのゆびには

うるおいがひとつと

波のゆくえが

幾重にも

透きとおる


それは

無限にひとつの

ひとみをこぼれる


2006/12/13 (Wed)

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