詩人:千波 一也 | [投票][得票][編集] |
開かれた窓に誘われて
毒を持つという虫が
飛んで入った
あわてて誰もが走り去る
入口のドアを
出口にかえて
みんな平等に
逃げてゆく
わたしは
一人ぼんやりと
歩み寄る、
窓辺
叱る声が後ろに聞こえた
疑うわけでも
信じるわけでもなく
この目にとまった
毒虫の色の鮮やかさに
誰もが避ける窓辺へ落ちた、
わたし
都合のいいセリフなら
いくらでもあるから
安易な確かめには
頼らなかった
頼れなかった、とも言える
やがて
音もなく毒虫は離れたけれど
そこに生まれた安堵の声は
ひとつの檻だと
わたしは思う
持ちすぎた色を
毒々しいと言いたげな
空からの拒絶を浴びながら
わたしはいつか
閉じられた、
もの