詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
焦りをおぼえた場所からは
やさしくきこえる
誘惑のつめ
口笛をなつかしむまでは
曲がり角などこわくはなかった
憂いにまみれた地平には
消せないほのおと
水夫のつばさ
雲のながれを追えない煙が
なみだを起こして夕日に染まる
いつわりをあばく緯度に立ちながら
傾けられない慰めの風
甘えてしまえない白々しさを
辛辣なけものが吠えたてるだろう
よこしまな直線に
地図はほつれて
望みのかわりに持つものは
いつかの日々の忘れもの
いつかの日々に
送るもの
擬似をたずねて数千里
沈まなかった向こう岸まで
手を振るかたちは
よろこびを負う
かろやかな
疲弊
ほどけた靴紐には
素直なむずかしさを乗せて
海をわたらず空を敷かず
さわやかな愚問を
浮かべて
並べて
永遠は滅びてもゆるやかな修復を