ホーム > 詩人の部屋 > 千波 一也の部屋 > 暁

千波 一也の部屋


[848] 
詩人:千波 一也 [投票][得票][編集]


海が眠る

その貝殻を

ためらいもなく

拾い上げて


ひとは口々に

語り始めるだろう

春を


春のための春、に

何をも待たず


つとめて実直に

見失うだろう

名もなき

春を



描かれ過ぎた岸辺も雪も

かろうじて

ある


ひとつの重みに

凛として


隠れ、さまよう

目と耳に

うたう



生まれたばかりの

うそを温めて

いつしか影は

波音に


さらわれる、

風のその肉声の

古い痛みが

ようやく

ほどいた

諦めを



やわらかな、




知らずにおけない

結晶の朝が

告げている


真正面から

背中へ




2008/01/08 (Tue)

前頁] [千波 一也の部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -