詩人:千波 一也 | [投票][編集] |
ページをめくると
とおく、の定義がお辞儀をみせる
わたしだけがみえない
わたしの仕草の輪郭が
えらばれた文字列のなかで
呼吸をしている
整然として
あきらめの途中だったり
秘密裏のみちくさ
だったり
それらは
漠然とよぶ宝石、のように
ほこりの底から
よみがえる
きれいに描く技法について
さがした指が染めていた、のは
落ち着きかおる
紙切れの色
窓のむこうに
そっと腰をおろすとき
じょうぶな椅子がわたしを試す
まるで無邪気に無言を誘って
ごきげんいかが、と
揺られて揺れる
インクをこぼしたあの空が
かき消す風を吹かせても
わたしは、わたし
一線を画して
幻をたつ
かろやかすぎず重すぎず
表紙をすべり
はだ色に