| 詩人:大示 | [投票][編集] |
微睡みの街を夜明けとともに
飛び越えて
眠らぬ涙の集落へ
夜毎訪れる君の幻を
不確かな夢の中で眺めた
忘れられぬ喪失感と
忘れたい苦しみのはざまで
想いすら揺らいでる
こんな僕は要らない
柔らかい時は躊躇い無く過ぎゆき
僕の魄を拐っていく
集まれ、嘆きの雫達
苦い羊水の中で眠らせて
漂う海風も懐かしい君の香り
聞こえるサザナミも
君が歌う子守唄
今もまた、何処かで生まれ落ちる
悲しみの涙よ
おいで、母なる海へ
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この手で救えた命など
どれほどあったろう
神様、叶うなら
次こそは誰の魄も溢さないように
願いは届きますか
荒れた地を見下ろす
広大な星空に
罪深い男が息を吹き掛ける
戦火の名残が
想いを邪魔するのなら
『夜風を呼び、かきけそう』
人知れずの戯れ言は
気まぐれな風に弄ばれて
明日へと届く
形振りかまわぬ願いは
届かないのだろうか
終わりの無い、
無意味ないさかいに
全てを賭けるくらいなら
この願いに
私が私として、ここに在るのは
今さら、どうしようもなく
いつ失うか
誰もわからない命を懸け願うのは
あまりに愚かだろうか
命、行くとき
流れ星が空を駆けるという
私が去るときも
誰かが星に願うだろう
何処かで、きっと
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君と不釣り合いな香りが
僕を遠ざける
誰が選んだの?
僕にとっては毒だよ、なんて
言える立場じゃない
君にとって僕は、ただの友達
わかっていても
アンバランスな香りが
僕を苦しめる
散々だった一日の最後に灯した
アロマキャンドルは
あの香りに似て
重い不意打ちを喰らった僕は
ふて寝することを決めた
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白い寂しい空箱に
ペンで似顔絵描いてみた
君の笑顔を思い出し
甘いケーキを閉じ込めた
また、からかわれるかな
また、笑ってくれるかな
僕の好きなあの笑顔で
あの時のプレゼントのお返しに
気合いの入ったショートケーキ
カッコ悪くなんか無いよ、きっと
贈りたい気持ちに
嘘をついていないから
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出逢い別れの季節なんて
今の僕にはピンと来ない
年がら年中荒れた部屋で
見ざる聞かざるの僕には
動くのを止めない無神経な時間と
変わっていく温度が
動けない体を追い詰める
この荒れた場所で静かな部屋は
髪一筋も残さず旅立った
あの人のアトリエぐらいで
描きかけの一枚の似顔絵は
ぎこちない笑顔の僕
永遠なのは冷たく動く時と
薄いカーテン越しに見る
堂々巡りの季節達
世界から忘れられた暗い部屋を
秘密基地にした僕は
もう一人の僕と、同じ様に白い世界で
ただ、笑っている
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在るのか、どうかもわからない
自分の事など確かめようがない
意味もなく不甲斐なく叫んでは
自分の小さな存在を感じていた
『切ない』とぼんやり呟いて
カタカタ震える両手を握りしめる
冷たい空気の中めぐる血を感じて
生きていると、涙を落とした
できるなら、見たくなかった
こんな僕は
せっかくの薬さえ効きはしない
許せない事ばかり多すぎて
なのに一歩も動けなくて
臆病な奴だと、呆れ果てた
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あなたの無口が私を安心させる
あなたの些細な言動が
私の心を引き寄せる
何も語らず、富無くても
誠実な、あなたがいる
ならば私は賢くありましょう
時折の小さな愛情に気づいた様に
つまらない、その場限りの見栄に
惑わされず生きられます様に
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夕日に抱かれた白い部屋
切なさ香るその色に
思わず景色が揺れたのは
朱色が怖くなったから
『夕暮れ時の風物詩』と
遠い時間が囁いて
『わかっているよ、そんなこと』
今の僕が呟いた
本当の独りきりなんて
知っているわけでもないのに
それでも涙が落ちるのは
僕が甘ったれだから
こんなんじゃ、笑われる
なんでもないふりをして
いつものように
おどけてみようかな
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私の真似なんて一体何のつもり?
オリジナリティないのかしら
私とあなた、どう見ても別物よ
細胞全部換えて出直しておいで!
美しい色鮮やかな森に
全てを否定されたカメレオン
『自分の身を守る変身』
それは
『過酷な世界』で生きるために
必要不可欠なことだった
| 詩人:大示 | [投票][編集] |
黒い静寂に、雫の呟き
聞く人なく溶けていく
幾星霜の涙、岩の牢獄に
深い穴を穿った
風が行き過ぎ、洞をくぐり
強く慟哭させる
ざわめきが、こだまして
深い青を揺らし明日へ
会うこと無い、誰かに届き
一滴の涙から全てが生まれ
風に浚われて駆け巡る